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[コメント] 陰日向に咲く(2007/日)

「この映画の岡田准一の演じた役がどんな男か、思いつくままに書きなさい」という課題がだされたとします。「パチンコにハマって借金作った」「母親が二年前に死んだ」そういう設定以上の事柄を書ける人はいないと思う。これはそういう薄っぺらい映画なんです。
JKF

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ギャンブル狂の岡田准一はどうしてギャンブルにハマった?そのオヤジの三浦友和はなぜホームレスになった?たぶん、映画だけを観てそれを説明できる人はいないだろうし、脚本家も監督も突っ込んだ質問をされると、「うーん、それは・・・」と言葉を詰まらせるのではないかと思う。

早い話、下手にこういう話でオールスターキャストを揃えらて、ロクに人物を掘り下げてもいない脚本でドラマを展開させちゃうと、岡田准一岡田准一にしか見えず、宮崎あおいはオテンバ篤姫、もとい宮崎あおいにしか見えない。断じてギャンブラーでもないし、お笑い芸人でもその娘で弁護士のねーちゃんでもない。

たとえば『マグノリア』のトム・クルーズの慟哭のシーンだけは、どんな役をやってもトム・クルーズにしか見えないトム・クルーズがフランク・マッキーという人格を持った人間に見えた。これは脚本がしっかりフランク・マッキーという男を描き、それを監督が演出していたからだと再認識した。(観ていない人すみません。群像劇と言うことで引き合いに出してみました)

設定やストーリーが結末ありきで作られているため、全て型にはまっているというかレールに乗っかっているようで、登場人物がまるでリアルじゃない。「陰日向に生きる人々の人生や想い」は何一つ伝わってこなかった。ここで、コメントの「この映画の岡田准一の演じた男がどんな男か、思いつくままに書きなさい」という問題の話に戻すと、「人物を描けていない」という言葉の意味がよくわかる。仮に好きな映画の主人公を思い浮かべてみると、その動作やセリフから、その主人公の性格までハッキリ分かる。箇条書きにしたら10個とか20個とか簡単に書けるだろう。ところが岡田准一演じる男の場合、設定以上のことを俺は書ける気がしない。あの結末につなぐために、「母親が二年前に死んでギャンブルにハマった」男にしか見えず、ケンイチをめぐるエピソードからも彼の性格や心情変化は表面的にしか伝わらず、ボロアパートのシーンを感動的にまとめるために作ったようにしか見えない。だから感情移入できないし、感動もしない。そして残念なことに、この映画はすべてのエピソードがそんな調子で描かれていて、弁解の余地がないくらいダメな映画だった。

それからあのボロアパートの一室に登場した宮崎あおいがあの大雨にも関わらずなぜ濡れていないのかも疑問だ。ズブ濡れの彼女も見たかった、ということではなく、この辺りからも映画の姿勢が見て取れる。「人間」を描くというのがどういうことなのか、悪い例として使用するにはうってつけの教材である。

脚本や監督のせいだけにするのはかわいそうなので最後に一言付け加えておくと、人気小説の映画化を急ぐのは、このところの日本映画界ではよくあることだ。ただ、そのために脚本家や監督がしっかり作品を掘り下げられないのも本末転倒だと思うよ、東宝と日テレさん・・・。

追記・あ、実は僕、宮崎あおいの「篤姫」が始まってから初めてNHK大河をマトモに観るようになったような人間なので、たぶん彼女が出てなかったら★1だったと思います。宮崎の「崎」の字はホントはコレじゃないんだ!ズブ濡れのあおいちゃんも見たかったよ!と地団駄踏みながらレビュー書いてました。

(評価:★2)

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