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[コメント] 審判(1963/独=仏=伊)

恐ろしい作家だ。全く突出している。その個性が際だって孤高だ。ここでは、スタンリー・キューブリックが足下にも近づけない程の寒々とした冷たすぎる映像を提示して見せる。
ゑぎ

 「権力と正義」というテーマを大真面目に或いは難解に描くフリをしながら、オーソン・ウェルズのやりたかったことは、全シーン初めから終わりまでスペクタキュラーな画面作りだけだろう。それは冷たすぎるスペクタクルだ。

 狭すぎたり広すぎたりで見る者に圧迫感を与えずにはおかないプロダクション・デザイン、美術。眩暈のように駆けめぐるカメラワーク。過度にセクシーで気まぐれな女たち。ジャンヌ・モローロミー・シュナイダーエルザ・マルチネリ、という女優たちへの、我々の窃視趣味を呼び起こすような倒錯的な画面。そしてオーソン・ウェルズの体躯と声。正にスペクタクルだ。

 私はカフカの原作を読んでからこの映画を見たのだが、原作と映画化された作品を単純に比べるのは全く愚かしい行為だとは思うけれど、この映画の方が遙かに勝っていると思う。少なくも私にとってインパクトがある。何と言ってもこのような見事な不条理は他の映画でも、他のメディアでも見たことがない。そういう意味でこれは真に映画的な題材と言えるだろう。なぜなら、映画とは不条理−嘘−に他ならないのだから。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)3819695[*] くたー[*] ガブリエルアン・カットグラ[*] セント ジョー・チップ

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