[コメント] ヘイトフル・エイト(2015/米)
圧倒的な雪の西部劇。雪の質量はコルブッチの『殺しが静かにやって来る』を目指したものだろう。それは冒頭の、超遠景から始まる馬車の"待ちポジション"でも明らかだ。本作も、走る駅馬車の撮り方は俯瞰ショットも並走ショットもちょっと今まで他で見たことのない画面だし、或いは馬の扱い、馬車を御する技術への言及が心憎い。
遠景で云えば、ウォルトン・ゴギンズ登場シーンもいい。こういう突出した良いカットを与えられたキャラクターがその後重要に扱われるという演出の一貫性がいい。タランティーノも巨匠らしくなってきたと思わせられる。開巻から主人公は圧倒的にサミュエル・L・ジャクソン、と思わせながら始まるが、店(Minnie's Haberdashery)に着いた時点あたりでカート・ラッセルの良さが全面に出る。しかし最終的にはウォルトン・ゴギンズが他を食ってしまうのだ。(しかし、全編を通じてもっとも印象にのこるのは、やはりジェニファー・ジェイソン・リーなのだが。)
前半のネタ振り(伏線はり)のための説明的シーンや、ブルース・ダーンの息子に関する回想を画で見せる取り扱いなど、少々よろしくない部分もあるのだが、それでも後半から帰結へ至る過剰な画面構築にはぶったまげた。やはり、タランティーノは面白い。エンディング(ラストカット)のバランス感覚についてだけ云うと、タランティーノ作品の中でも一番好き。なので大満足。
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