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[コメント] 96時間(2008/仏)

“Taken”=誘拐、という原題どおりのシンプルでアクチュアルな直球娯楽暴力映画。リズム良くズバンズバン投げる豪腕投手の試合運びか、あるいは… ハ ン マ ー で ガ ッ ツ ン ♪ ガ ッ ツ ン ♪ み た い な ♪(09.08.31@TOHOシネマズ梅田)
movableinferno

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







思わせぶりなタメを作らずにガンガン球投げて、かつ一本調子にならずにテンションを維持する力ワザに惚れ惚れしたワァ。主人公も物語も止まりません。誘拐された娘を取り返す、ザッツオール。その筋だけ取り上げると『コマンドー』が浮かぶわけですが「何が始まるんです?」「第三次世界大戦だ」でおなじみ、ぼくらのだいすきなお茶目☆でトキメキ☆のハチャメチャ☆なハッタリ☆感と違ってゴリッゴリにアクチュアルなところがこの作品の身上でチャームポイント、かつ強引な試合展開に説得力を持たせる強化系魔法となっています。セレブな継父の懐を狙った、あるいはビジネス絡みの誘拐か?と思いきや単に人身売買組織の犯罪に巻き込まれたという事件のスケールの小ささがかえって切迫感を生んでいたりして、しかもそれがたまたま、ではなくてきちんと狙ってやっていそうなあたり「リュック・ベッソン脚本になってるけど、あいつぜってーなんも書いてないぜ!」と微笑ましい気持ちになります。

なかでも℃級の萌えポイントはやっぱり「寝室に逃げ込んでベッドの下に隠れろ。隠れたか?いいかよく聞け。残念だがおまえは捕まる。」というプロフェッショナル☆イズムびんびんのイヤらしい台詞とか、保身のため敵側に立つ知人の家に乗り込んで彼の妻を人質に取り脅しをかける際、

(1)内勤に回って勘の鈍ったかつての盟友を余裕綽々で出し抜く

(2)一切の躊躇なく彼の妻を撃つ

(3)しかしあくまで浅い傷で済む程度に腕を撃つ

(4)その上で「協力しなければ今ここで頭を打ち抜く」と言って無造作に銃口を向ける

(5)そこまでやっといて最後に「奥さんに謝罪しておいてくれ」とかとか言っちゃう☆

などの、情緒の排除とアクチュアリズムの徹底によるエージェント最強伝説のエッジィでエクストリームな描写群ですよね。きもちいい。これなんでこんなにきもちいいかねー。

あとあと、人物描写もなかなかに繊細で、娘の誕生日プレゼントひとつ選ぶのにヨドバシにしつこく通って何回も何回も店員に商品説明させるオトンの(職業)病的神経質さとか、だけど選ぶモノがカラオケセットだったり昔取った杵柄でセレブミュージシャンの警護についても間の抜けたこと言っちゃってあしらわれたりするトホホ感と、仕事モード入ったときの戦闘マシーンぶりとの対比による手堅い萌えキャラ造形はもちろん、イケてないプレゼントをちゃんと喜んであげるかわゆい娘が「継父からのよりゴージャスなプレゼントに本意気で喜んでしまう」という正直な反応を見せるオツな場面、元嫁との間のいろんな恩讐を一応は清算しつつも永遠に微妙な空気感を絶妙に醸し出す会話など、ワンセンテンス、ワンアクションで効率よく人物を見せる演出は見事。『サマーウォーズ』は見習うといいと思いました。

このような剛球かつ精緻なコントロールによる投球の結果、セガール並みのFUJIMIを誇りモンスターのように敵をKAIMETSUさせ娘をDAKKANしても、そこに「ジャンク喰ってウヒヒ」な捩れた楽しみではない直球の感動が用意できたわけです。もうねえ、立派。その豪腕に心からの敬意を払うものです。そしてそしてそして、なにが濡れるってこれだけやって93分。ああん、もう、どうにでもして。堂々の5点。

(評価:★4)

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