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[コメント] ゴジラ×メカゴジラ(2002/日)

負うた子に教えられるのもたまには悪くない。「この世に生きてちゃいけない命なんかないのよ」けだし名言である。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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この映画は随分と熱い。他の皆さんのコメントをあえて眺めてから、事前知識タップリで観にいっても燃えるものがある。手塚監督、確かに前作の成功とはいえない結果に明らかに学んでいるな、そう思える出来である。

メーザー砲戦車を生かすために、あえてモスラやガイラの事実をあったことにしていること。メカゴジラなどという異常な特殊兵器を創りあげるために、あえて初代ゴジラの骨からDNAを引き出してのサイボーグとしたこと。そして、それらを統括するのはGなんたらとかいう恥ずかしい肩書きの連中ではなく、あえて自衛隊にしたこと。

金子監督のように、「国防軍」と割り切る度胸はないにしろ、最近のゴジラ映画では自衛隊が蔑ろにされていることに自分は大いに不満だった。別の処で書いたように自分は和風リベラリスト…保守でも革新でもない「中道」なのだが、必要とされる限り自衛隊は存続して然るべきだと考えている。まして怪獣が間断なく攻めてくる国土であれば、護りの楯たるべきは自衛隊でなくて何であろう。自衛隊を持つこと=軍国主義の鼓舞と考える左翼には「中道」は与し難い。自衛隊は「この世に生きていていい」命を持っている。

話は変るが、サイボーグの「暴走」という言葉に、随分多くの人が「エヴァ」を連想しているようだ。それを「安易な流用」と呼ぶのはたやすいけれど、「古い皮袋に盛られた新しい酒」と見るのが正しい見方と自分は考えている。メカゴジラ自体も、鉄人28号からガンダムまでのヒストリーをそのボディに濃縮されてつぎ込まれているロボットであるのに、細かいディテールに過敏反応する必要があろうか。ガンダムが商業的にこれだけ命脈を保ちつづけ、一種ロボットアニメの王道のように言われているのは、つねにその時代その時代のいいものを受け継いで「モビルスーツ」というカテゴリーに吸収しつづけているからだ。ゴジラもまた怪獣映画の王道と呼ばれることに異論はないだろう。ならばガメラやエヴァといった新作からは新しいものを学び、自分なりに咀嚼する立場が必要とされている筈だ。

以下は蛇足。他面から見れば、釈由美子の上手いとは言えない演技、またしても試みられる仲間内の恋のアプローチ、自衛隊内の子供めいた口喧嘩などが視野に入りはしたが、案外そのあたりは笑って見過ごせる気持ちになっている。それどころか、ゴジラにまたしてもとどめを刺せなかったところまでだ。初代『ゴジラ』のコメントにゴジラは災厄であり、怒らないからこそ恐ろしいのだと自分は書いた。今回のゴジラはそれに非常に近い。金子流の「太平洋の英霊がのりうつったゴジラ」よりは、自分にはこのほうがしっくりくるような気がする。災厄だからこそ、最小限の被害で国土を防衛できたのは喜ばしいことだ。ただ怨念を抱く者(釈由美子)だけが、これは引き分けだったと独りごちるだけでいいのだろう。彼女だけがゴジラと一対一でタイマンをはったのだから。

(評価:★4)

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