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[コメント] ゴジラ×メカゴジラ(2002/日)

過去の遺産が設定として次々と登場する魅力に誘惑されそうなるところを、あえて留まってみる。そうすると……あれ?
荒馬大介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 本作に関して自分は、金子ゴジラの後だけに「とりあえずこのどん詰まり感を打破してくれればいい」と思っていたが、北村ゴジラや『戦国自衛隊1549』を経てどうもその考えを改める必要に迫られた。続編が製作されそこで話は完結てはいるものの、思い返してみればみるほど、こと本作に関しては中途半端さが満ち溢れている。

 過去作品を利用して設定を作り上げる、という点に関しては、本作は実に魅力的だ。3式機龍=メカゴジラはゴジラの骨そのものであるし、超兵器を導入する経緯として『モスラ』や『サンダ対ガイラ』のパラボラ兵器をあったことにするというのは実に興味深い(平成シリーズにおけるメーサー兵器はかなり唐突に登場していることから比べても、まだ流れとしては自然なのだ)。

 しかしそれだけのことをしておきながら、新しくこしらえた部分に何ら魅力を感じないのはどうしてなのだろうか。あたかも、設定の掘り下げ度と反比例するかのように。

 ゴジラ同士、同族が争うという部分にしても、泣き声に共鳴して一回暴走しただけではまだ物足りない。釈由美子も頑張ってはいたが、おかげで彼女以外の隊員達の描写がやや減ってしまったのも残念ではある。宅間伸親子の描写(特のあの女の子!)ももうちょっとあってもよかったはずだ。機龍が暴走して甚大な被害を生じてしまい政治的判断に迫られる時も、機龍不要論を激しく訴える人々とかがあればなおさら盛り上がるはずだ。いろいろと要素は散りばめられているが、どうにも食い付きが悪い。ではどうすべきか。

 ……再び機龍を迎え撃とうとするも戦闘中に機能がダウンし、家城3尉が機龍内部に乗り込んで操縦を試みる。ここで、再びゴジラが彷徨し、共鳴した機龍はまたもコントロール不能になりかける! 慌てふためく特生自衛隊本部。その時、フト家城の頭の中に、機龍=初代ゴジラの意識がカットバックされ……「やめて、機龍!何もかもおしまいになってしまうのよ!」叫ぶ家城。その瞬間、まるで家城の意思を汲み取ったかのように、機龍の暴走は止まるのだった。「……私はあなたと最後まで戦うわ。さあ行くわよ、機龍!」……

 これでも甘いという方はいらっしゃるかもしれないが、個人的にはこれくらいやって欲しかった。結果論になってしまうが、『東京SOS』のラストで意思を持った機龍を描こうとするならば、こういった付箋を貼っても何ら不自然さはないと思う。その為には、同時上映作品があることを意識して何もわざわざ90分以内という枠で収める必要は無かったはずだ。第一作目のゴジラやキンゴジですら100分を切っている点を考えると、どうにもシンプルにまとめすぎた感がある。『東京SOS』は90分以内で収まっているが、それは本作のようにメカゴジラ誕生といった説明をする必要が無いからだ。きっかけをきちんと描くならば、もう少し掘り込んで欲しかったとつくづく思う。惜しいなぁ。

 ★4になれたかもしれない★3点。

(評価:★3)

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