根っからのショウマンであるアポロ・クリードなら決してやらなかっただろう路上の喧嘩。だが愚直にまっすぐ生きてきた真の「ピープルズ・チャンピオン」ロッキーは戦う場所を選ばない。昔からスタローンは、ボクサーではなくひとりの人間としてロッキーを描いてきた。

シリーズのしめくくりでフィラデルフィアの下町に帰還した文無しの王者に残されたものは、かけがえのない家族と街の人々。なんと素晴らしく豊かな人生だろうか。

不満を言わせてもらうなら、下町のゴッドファーザー・ガッツォ親分が出ていなかったこと。一作目でロッキーを高利貸しの集金係に雇っていたヤクザのガッツォは、シリーズが進みロッキーが成功しても、決して彼にタカる事もなく無心にオラが街のヒーロー・ロッキーを応援し続けていた。あのストリート・ファイトを、ガッツォ親分にも見せてやりたかったよ。神父さんはちゃんと出てて、ロッキーを祝福してたのにな。

◆追記◆

調べてみたところ、ガッツォ親分を演じていたジョー・スピネルは89年にこの世を去っていました。『ロッキー5』は90年の映画なので、彼の出演はかなわぬ夢だったのだ。無念…