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[コメント] 日本沈没(2006/日)

死者・行方不明360万人、15分に及ぶ前作の衝撃的な東京大地震より、全国津々浦々を満遍なくそれぞれ20秒程度で破壊する方がファンサービスだと思ったのか? ディザスターシーンに動きが少なくて怖さが伝わらない。その手始めとして自分の地元があぼーんしてしまうし・・。
アルシュ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







■前作とは役者の力量の差が歴然で、緊迫感がまるでない。

少年時代にこの『日本沈没』に衝撃を受けて、樋口監督は映画に関わるようになったという。そのためか、「1000人が駄目なら100人でもいい。100人が駄目なら10人でも、いや1人でも。」「何もしない方がいい。」「韓国・北朝鮮へは密入国になります。」と言ったセリフ、字幕の出し方。「この地方にはまだ被害は無い。」と言った前作へのオマージュもある。しかし、前作のオーラ出まくりの総理・丹波哲郎や渡老人ほどに言葉の力と目の力が無い。

なにより田所博士である。小林桂樹はまさにはまり役でTVシリーズでも同役を引き受けている。彼らのような実力派俳優人の鬼気迫る演技がどの役者にも不足しているから、緊迫感がどうにも伝わらない。

その上、庶民代表格である「ひょっとこ」の面々の避難だが、“悲惨な内容に笑いを”という配慮で用意したらしいが、これがまたその緊迫感のなさに拍車を掛けているんですよ。

■実は名も知らぬ母子の物語があった!

山本総理が日本沈没を知ったあと結婚式に出くわすが、幸せそうだったあの新婦はその後飛行場のフェンスで潰されそうになります。その後、路上に並べられた死体の傍で「すみません…すみません・・・」と旦那の傍で子供の死体を抱きながらうずくまる。ここだけは涙を誘わせて頂きました。

■さて、日本沈没・第二部は・・・。

全世界に散らばった日本人は各国のお荷物難民となって、スラム化した難民キャンプで暮らしている・・・と想像していたが、丁度、小松左京原案、執筆谷甲州氏による第二部が刊行されました。

経済的にも現地人を凌駕するほど各国で強かに生きていた日本人。政府は日本の排他的経済水域の海洋上にメガフロートの建設を計画。世界は25年前の異変(日本沈没)によって寒冷化の兆候を示し始めると言う内容。

ところが、今回の映画の終わり方では、この続編には繋がらない。中途半端な希望の残し方は『ドラゴンヘッド』同様である。分断された祖国に橋を掛けまくるという「プロジェクトX」ストーリーになってしまう。

個人的には『日本沈没・第二部』の映画化も希望だけど、原作と1973年版の映画を基準とした内容として頂きたいものです。

■辻褄合わせでどっちらけ

この主人公達・小野寺俊夫と阿部玲子はまさにネ申である。

横須賀と品川の距離感の無さは元より、灰の降りしきる死者の街を彷徨っていると思ったら、玲子らレスキュー隊のキャンプ地まで突如として現れる。玲子とテントの中で一夜を過ごしたと思ったら、はやくも横須賀のJAMSTECに戻っている・・・お前は瞬間移動の能力があるのか!

小野寺を追いかけて居所を突き止めてしまうが、それもある程度めどが有るから納得もしよう。しかし、少女美咲を箱根で救助って、たまたま?・・・もはやネ申としか思えません。

まぁ、こう言ったご都合主義がなければ2時間15分には収まりませんが、この監督は辻褄合わせよりも、絵的なものに拘る傾向にある。

衛星軌道上あたりからみた日本列島は物語中盤で、断層が裂け、火山が噴火し、平地が水没してしまっている。その時点で東京が無傷だったり、各地で空港や港が稼動している。絵的な日本列島の惨さを現したいのが理解できるけど早まりすぎ。

絵に拘る極め付けが、クライマックスの小野寺の「わだつみ2000」の潜行シーン。日本海溝近くで日本からは遥か沖合いでのミッションにもかかわらず、沈んだ街を通って現場に向かう。「このシーンだけは絵的に外せない。」って事だったらしいけど、ご都合主義と辻褄合わせばかりでは、観ているほうがシラケルだけで、ストーリーにのめり込めないのが当人には解らないようです。

前作1973年版は中1の時で初めて映画でリピートしました。母国の悲しい運命と当時としては特撮の宝庫だったので、5回とも胸を躍らせて映画館に足を運んだ覚えがあります。

今回は劇場鑑賞は1回で終了です。前作はブームが2年は続きましたが、今回は夏が終われば過ぎ去るお寒い内容でした。でも『日本以外全部沈没』が秋に公開されるから、秋が終わるまでは話題は続くでしょうか?

30年以上愛してきた『日本沈没』だが、及第点の出来で終わって欲しくなかったんですよ〜ぉ!樋口監督さん、これが夢にまで見てきた映画の製作だったんですか?

(評価:★2)

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