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[コメント] ダンケルク(2017/英=米=仏)

ゼロ・グラビティ』に通じる物語の体験型表現の提案。その挑戦を買う。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







目的が、テキストベースの作劇に寄らず「映像だけで物語を語りきる」にあって、CGじゃそんな絵を生み出す自信がないから本物を写すことにしたのか、逆にCG隆盛でダメになりつつある映画というジャンルに喝を入れることが目的で、こういう題材の選択と表現の仕方になったのか、なんとなく後者のような気もするが、とにかく監督の本物志向はすごかった。戦闘シーンだけでなく防波堤に打ち寄せる波飛沫と風でちぎれ飛ぶ波の花の日もあれば、不気味なくらいシーンとした青空の広がる日もある海岸線の日々の天気待ちの徹底ぶりとかも。

戦闘シーンで一番魅力を感じたのは、あまり戦闘機とかに興味ないのに、戦闘機のシークエンス。とにかく空間の広さ。飛べども飛べどもダンケルクは遥か先を感じさせる大きな背景にポツンと飛行する戦闘機の構図や、墜落していくまでの長い長い航跡の見せ方が今も脳裏に焼き付いている。いままでこんな物を見たことがなかったからだろう。

一方で感興がわくのは、燃料キレの戦闘機を海岸に着陸させたパイロットが燃やした戦闘機を眺めながら連行されるシーンや、救助した兵隊につきとばされた友人の容態を尋ねた兵隊に少年が「彼は元気だ」と答えるシーン、結局どんな絵もそれらのシーンにはかなわなかったりする。どんな凄い絵を見ても、ドラマチックには勝てない、してみると人間ってどんだけ「ドラマ」好きにできているのか、とか、結局は映画は従来のフォーマットに落ち着くのか、とも思ってしまう。

しかし、「もう○○でやることはすべてやりつくした」、「○○は終わコンだ」とか、批評家ぶるやつが圧倒的多数の中で、「こういうのもあるよ」って新しいものにチャレンジして、しっかり形にして、映画表現の可能性を広げた監督をやっぱり讃えたい。

(評価:★4)

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