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[コメント] リリイ・シュシュのすべて(2001/日)

岩井俊二>監督への九つの質問と<『リリィ・シュシュのすべて』>への一つの感想→
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■ 質問1:あなたは「ドグマ95」にでも署名なさったのでしょうか?それとも「ドグマ95」への挑戦?

ラース・フォン・トリアーも真青な手ブレの映像と、色と光を誇張した詩情を湛えた映像と、エクリチュ―ルの反復、コラージュ。一見斬新に見えるが、その実、古典的。すぐに風化するだろう。なぜなら、極めて表層的だからだ。「表現の表現」でしかない。≫

■ 質問2:あのエクリチュ―ルの挿入は『ゴダールの映画史』を意識していませんか?

≪タイプライターからコンピューターへの移行。<無意味な記号>が<有意味な記号>へと変換されるその過程、そして、その<有意味な記号>も「リリィ・シュシュ」という<メタ的記号>にエンクローズされた世界にのみ成立する、その過程をひたすら反復させる映像表現の"アレ"は一体何なんだろう?あの技法の評価はさておき、致命的な欠陥(と言ってもいいと思う)は、あのBBSの書きこみが、ほとんど同一人物によるもの、自作自演としか"読み"得ない点にある。「2チャンネル」でも、もう少し"個性的"だ。≫

■ 質問3:「エーテル」って何ですか?あなたはジャーゴニスト(jargonist)ですか?

≪要は、あの神戸連続少年少女殺傷事件を引き起こした少年が創り出した「バモイドオキ神」や「アングリ」のジャーゴン的言語世界のラング化だろうか?きっと、岩井監督も柳美里みたく、少年Aの書いた作文「懲役13年」を大絶賛する<オトナ>なんだろう。きっと、「透明な存在」みたいなコトバを「ワカル」とか言っちゃう<オトナ>なんだろう(実際、映画で使っちゃってるし)。なにげにちょっとオウム的。(*質問8に関連する)≫

■ 質問4:リリィ・シュシュは音楽的にヒットすると自信ありましたか?今は、やっぱりCharaもしくはYen Town Bandを再起用するべきだったと後悔していませんか?

≪あの<(chara+UA+cocco)÷3>なアーティストもどきは一体・・・。それにしても軽薄な<カリスマ>ほど怖いものはない。≫

■ 質問5:音楽小林武史とのコラボレーションは、懲りずにまたするつもりはありますか?

≪両者にある「青臭さ」は共通しているが、その方向性や質量のベクトルはかなり異質で相反的でもあると、僕は見る。ある意味、同類嫌悪的で、だから映像と音楽がチグハグだが、その自己破壊的なところに「セツナサ」を感じる方もおられるだろうけれど。≫

■ 質問6:この作品を「遺作にするなら遺作にしたい」そうですが、エクリチュ―ルの基底を成すのは<遺言の構造>であることを意識した上の発言でしょうか?ならば、これまでの作品は「遺作」にはなりえないのでしょうか?

≪ああ、「だから」「ダメ」なのか・・・。≫

■ 質問7:「14歳のリアリティー」の<名詞>ではなく、「14歳のリアル」の<形容詞>にしたのは、確信犯的にですか?

≪それでは、「14歳の”アン”リアル」はどんなものだろうか?NHKの『中学生日記』みたいな世界?≫

■ 質問8:つーか、あなたは<14歳>ですか?

≪すでに14歳ではないから、描かれる<14歳>は「記憶」でしかないから、その「14歳のリアル」な世界を描くには、その「限界」、その「乖離」を十分認識した上でないと、単に「不気味さ」と「不可解さ」だけが残る。「それがいいのだ」という意見もあるだろうけれど。≫

■ 質問9:さて、これが<リリィ・シュシュ>の<すべて>ですか? 

≪146分。<必然>としての146分なのだろうか?僕には、リリィ・シュシュなるアーティスト(?)の、MTVピックアップ・アーティスト特集もどきとしか思えなかった。惰性の映像、惰性の音楽、惰性の146分。≫

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■感想1:この映画『リリィ・シュシュのすべて』。何か言っているが、何も聞こえてこない。

アレっ、結局「十の感想」になっちゃった。

〔★2.75〕

[2.20.02/京都みなみ会館]

(評価:★3)

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