[コメント] 茄子 アンダルシアの夏(2003/日)
あの黄金色の茄子の塩漬け、いちど味わってみたいものだ。ただの推測に過ぎないが、ほんのりとしょっぱいのではあるまいか。余計なセンチメンタリズムを極力廃したこの作品も、ちょうどそんな味わいだ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
ペペは最初からラスト数分前に至るまで自転車を必死でこぎ続けている。好いた女にも、それを掻っ攫っていった兄貴にも未練がましい思いをぶつけたりはしない。プロとして広告主のためにひたすら自転車を駆り、終わったらそれっきりだ。実に「それ」らしく誇張がない。ここまでビジネスライクなのは、一時期の日本のスポーツアニメが、競技中にさまざまな思いを巡らせて、結局22分くらいのTV1回分を1,2回ボールを投げるだけで済ませてしまったりするのと好対照だ。ここには現実と同じ時間が流れている。
そこにちょっとしょっぱい味をつけるのが、劇中にすれ違う大きな牛型の看板だ。ほんの数秒、日陰を作ってくれた牛にペペは敬礼する。ちょっとした心の動きが描かれるのは、ほぼそのくらいだ。日本人らしからぬこのクールな物語に、一点加えられた情緒。それで充分だ。すっきりとした味わいは後にベタベタと尾を引かず、気持ちよく劇場を後にできた。満足だ。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (9 人) | [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。