[コメント] ナビィの恋(1999/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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この映画は「泣く」映画じゃないと思ってた。
それもラストの近所総出で歌い踊るシーン。コミカルなシーンに笑い、気づくと涙が出てた・・・
人生の終盤で何とも残酷な仕打ちを受けたおじいが可哀想で可哀想で。だけど孫娘が島に残り、子を産み、家族が増えていき、家は破滅どころか繁栄していく。
よかった。皆が幸せになれたようだ。僕はこんな映画が大好きだ。
しかし、沖縄戦を描かない「日常の沖縄」を描いたこの作品で、逆に下記のような重い事実をも痛感させられた。
***追加レビュー*** 『【本土復帰】30周年って何よ?』
日本人はオキナワに対して常に後ろめたさを持っている。
日本が奇跡の経済成長を成し遂げていた時期は、沖縄が米領オキナワであった時期と符合する。当然であろう、敗戦の代償としての負の中身(基地)をオキナワに負担させ、日本は本土の復興と成長だけを考えていればよかったのだから。
この作品では字幕を必要とし、おじいは「孫娘が日本人(やまとんちゅう)と結婚する」という台詞がある。伝統衣裳は大陸のそれに近く、文化は明らかに「日本」のものではない。
かつて薩摩藩が琉球王国に「対外戦争」を仕掛けた末の戦利品として日本に組み込まれた沖縄。
しかし第二次大戦で敗戦が濃厚になると、本土人は沖縄を捨石としてあっさり切り捨てた。岡本喜八の『激動の昭和史・沖縄決戦』では凄まじい描写で本土人に殺されていく沖縄県民たちの姿が描かれている。当時、島の南端に追い詰められ自決した海軍太田少将の遺言:「県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ・・」という願いも空しく、本土復帰が決まった時に沖縄県民たちは逆に復帰に反対する者が多かった。
おじいは出掛ける際には鼻歌のように「星条旗を永遠に」をつまびく。日米そして琉球の言葉をミックスで喋るおちゃめなおじいは、あの生き地獄の戦場で三分の二しか生き残らなかった県民の一人なのだという恐ろしい事実がある。
あの特異なおちゃめさは、かつて地獄を見た人間だと思うとぞっとする。
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