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[コメント] 君たちはどう生きるか(2023/日)

もう身も蓋も無く今更乍ら宮崎駿について確認した事。☆3.8点。
死ぬまでシネマ

風の谷のナウシカ』を観た時の衝撃は、『アラビアのロレンス』の様な、堂々とした一大絵巻の衝撃だった。日本の、アニメがここ迄の世界観を示せた事への感激であった。ところがその後の作品群には、私はそれ程の満足感は抱けなかった。と言うか、世間の評価との違和感を感じるばかりであった。

宮崎 駿という作家の作品は、多くの観賞者によって読み解かれるのであった。その意味するモノを味わうのであった。『もののけ姫』の世界が意味するモノ、『千と千尋』の異世界の構造を、多くの人々が分析するのであった。確かに思い返せば、宮崎 駿の世界は常に異世界でのファンタジーであった。異世界の綿密な構築は監督の心の写し鏡であり、それが細部に至る程、彼の奥深さに観客は魅了されるのであった。

私と言えば、余り世界の読み解きに興味が無いのであった。登場人物が物語でどうなるのか、その感情やアクションが重要なので、<異世界>である事にそれ程拘りが無かった。その事が、宮崎作品の新作を観る度に「?」マークが点灯する理由なのだと、今更乍らに気がついた。

そんな私でも、宮崎作品を繰り返し観賞すると、流石にその作品世界が意味するモノが徐々に浸透して「成程ナァ」と感慨深くもなる。それは宮崎駿以外に同程度のクオリティの作品を創れるアニメ作家が存在しない、という事も大きいだろう。どうでもいい下らん作品ばかり観ているので、宮崎作品がどうしても有難くなってしまう。(この辺り、漫画界に於ける手塚治虫と似ている)

     ◆      ◆      ◆

前作ではまだ第二次大戦という物語の大枠があったから、主人公も人生(戦争)という物語の中を進めたが、本作ではいよいよ完全に自己の内部に突入してしまった。ハッキリ言って架空の主人公(少年)が架空の登場人物達とどうこうする物語では無い。もう完全に宮崎駿の精神世界を<異世界>として表象したもんだろ。勿論表題にある様に、彼が私達観客(若者達)に訴えたい想い・情念はあるのだろうが、別に「異世界の謎解き」を有難いと思ってない初見の私には、矢張り今回も、と言うか今回こそ、身も蓋も無く訳が解らない作品となったのであった。

(評価:★3)

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