[コメント] JUNK HEAD(2017/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ストップモーションアニメって、ある作り手がその人の世界観を作品として具現化しようと考えた時に、その世界に自らも「触れたい」っていう気持ちが昂じて最終的に辿り着く方法論なんだと思う。セルアニメやCGはもちろん、実写すら辿り着けない表現の極北。多分特撮の精神が基本にあるだろうけどそれ以上に確実にパラノイアなものがあるはず。そして、そういうパラノイアってやっぱり面白くて、それが作家の力だと思うのだ。 コマ撮り自体が狂気の沙汰と思うのだが、マリガンの分泌粘液の質感とか錆まみれの鉄屑、一部が樹皮化した女の子(?)の肌、新鮮なクノコのムニムニ感、干からびたクノコのカピカピ感とその食感(触感)の生々しさ。この彫り込みは本当に頭おかしいと思う(褒め言葉)。
無機的な世界に対比されるエロス(エッチという意味ではなく)という意味で、造形自体の相似ももちろんあるが、『エイリアン』と『鉄男』を想起した。『鉄男』については劇伴の雰囲気の相似も認められる(有機物と無機物の融合というテーマの影響も認められるし、頭のおかしいコマ撮りシーンもありますね)。もちろんクローネンバーグやシュヴァンクマイエルからの影響もあるだろう。主人公の意識の器がコロコロ変わったり、時に言葉をなくすのは手塚治虫「火の鳥」みたい。そういえばクノコも火の鳥のクローン食品っぽいなあ。
クノコをくすねるおっさんが関西弁なのは一瞬どうかと思ったが、人類はマリガンを自らの似姿として作ったのだろうから地下で人類の記憶の残滓=文明・文化のちゃんぽんが出来上がった結果として生まれた、という説明が出来るだろうと思った・・・これが仮に間違いであっても、色々想像させる余地があり、良いSFの要件を一つ満たしていると思う。
地獄で遊ぶ、という意味で各所の脱力ギャグはいい味。何気に熱い筋運びもいい。命を落とす三バカは絶命前に「(神様を救ったから)天国に行けるかな」と口にするが、彼らが言う天国(地上)からして空こそ青いかもしれないが瀕死の地獄の世界なわけで、目的のために命を賭して戦った一瞬が天国だったということになるわけだ。
たいへん面白かったのだが、この監督さんについて、闊達なストーリーテラーという印象は受けなかった。中盤はタルいと思った箇所もあるのが正直なところでこれが減点要素。続編で三バカ覚醒シーンを超えるものを期待したいです。
個人的にベストデザインは覚醒前の三バカ、次点でエレベーターの操作してる妙にカッコいいアイツ、その次にホクロ。ホクロ、多分マリガン界ではイケメンですよね。
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