[コメント] そして父になる(2013/日)
ちょっとすれ違ってしまった感じ。
複雑な現実、曖昧な人間、誰も知らない胸の内を繊細に描きながら、作り手の思惑もバンバン入っており戸惑ってしまう。あっちゃこっちゃがてんやわんやになる筈の子供の取り違えが、なぜか福山雅治ひとりの成長に収束する展開も、アカンとは思わないまでもかなり気になるのだ。割りきれぬものを示して観客が考える材料を投げ出してみせる映画というのも判るが、それ以上に作意が目につく。信用できぬ。これはたぶんオレが以前ウンコ映画『ディスタンス』でひどい目にあったことを忘れず、未だ是枝裕和にわだかまりを抱き続けているからだろう。
「キン肉マン」におけるキン肉星王位争奪編では、生まれたばかりで取り違えどころかシャッフルされた6人が、キン肉星の王位をかけて闘う。キン肉スグルは闘いの中で多くを失いながら学び、自分が何者であるかを知る。漫画界広しといえど頭の悪いことではトップクラス(褒めてます)のゆでたまご先生でさえ、真弓大王が父の自覚に目覚めて成長しましたなんてオチにはしなかったのだ。
取り違えが起ころうとも子供の生き方を決めるのは子供自身であって、子供の中にあるドラマをかわしておいて父親の成長とか家族とは何かとか言われてもまったく興味ないな、と思う。特別ダメな映画とは思わないが、この映画とはちょっとすれ違ってしまった感じ。
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