これもまた上映前に絵コンテを拝見したわけですが、『影武者』以降のカラーは見事としか言いようがありません。 　黒澤のカラー作品の特徴は、そのはっきりした原色を使うという点にあると思うんですね。 　ところがこの『夢』においては、更にまた見事に色を進化させていて、見る者を圧倒します。 　ゴッホのエピソードの黄色、富士山のエピソードの赤などなどなど・・・素晴らしいですね。 　タルコフスキーと親交のあった黒澤は、最後の水車小屋のエピソードで見事にソラリスを再現して見せます。むしろ、自分の方が上手だよと胸をはって見せているようにも受け取れます。 　タルコフスキーが水に象徴される芸術家であるように言われますが、実は黒澤はずっと昔から水（雨）にこだわっています。日照り雨にはその熟練した水が色々な表情で画面に登場してくれます。 　僕としては、もうこれで十分ということ。おなかいっぱい。