[コメント] 運命じゃない人(2004/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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そこをがんばっておけば後が安心、もし演出で上手くいかないことがあったとしてもそれが保険になるからだ。そこで構成を練りこんだ騙し騙され話を考えたのだろうが、一日の長だったのは、その金が……なこと。それを必死に取り返そうという動機が、もう可笑しくなってくる。金が……だっていうことで、コンゲームにありがちな殺伐した感じが消え、ゆるんだあたたかみさえ感じるようになるというのは面白い。やはりお金というのは不浄の物なのだ、と改めて認識したりして。監督が全体のトーンをそういうあたたかみのほうへ持っていくために、この仕掛けを思いついたのだとしたらそれは凄いアイデアだと思う。
この作品が魅力的なのは、鑑賞後の印象が、男ってかわいいよね、女たちも憎めないよね、っていうところに落ち着くこと。『カリオストロの城』のセリフにあるが「なんと気持ちのいい連中だろう」という感じ。人は単純に、気持ちのいい人を見ることは気持ちがいいのだ、というドラマツルギーにおける真理がここにあるのではないか。そういう人間を造型することっていうのは、そうすればいいとわかっていても、面白いストーリーを作る中では、そうも気持ちのよい連中ばかりに描けないという制約があったりして、なかなか成功しないものなのかも知れない。これはそれに成功しちゃったがゆえに魅力的なのだ。
野暮を承知でいえば、同僚がマンションを借りにくるという設定がちょっと無駄になっている。 あれは、宮田と神田が、彼女がケータイの番号をでたらめを教えたとか話している時、突然チャイムがなり、一瞬彼女が帰ってきたように観客に想像させるようにして、ドアを開けたら同僚が立っている。で、同僚が宮田らに「お前早くでていけよ」とか何とか言っているうちにエンドクレジットになって、それが終わりのほうになったところで、彼女(らしき人、誰かはわからない)がマンションにやってくる。宮田のマンションの前にタクシーが停まり、続いて料金を払う手元だけを映す、タクシーの運ちゃんが「ちょっと冗談やめてよ」と白紙の札をつき返す、で、(同僚のデート相手の女性ではなく)彼女とわかる……いや、こんな面白いオリジナルにそういうのはやっぱ余計なことでした。
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