コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 宇宙戦争(1953/米)

原作を現代風にアレンジしながらも、絶望感を一切失わせなかった演出力に、ただただ感謝するばかり。恐怖は「絵」だけでは出せないことがよく分かる。
荒馬大介

 これと『インデペンデンス・デイ』を比べると、エメリッヒ監督は似たような話をただ派手に装飾しただけだというのがよく分かると思う。否定はしないが。

 原作はH・G・ウェルズの同名小説だが、話の舞台は1900年代初頭のイギリスじゃ無しに製作当時のアメリカ西部に。もちろんマシンは3本脚のウォーマシンから円盤型の浮遊マシンに変更された。デザインは日系の人だそうで、宇宙人の乗り物として「円」が定番だった当時としてはかなり斬新だと思う。

 で、これらの措置が原作をぶち壊しているかというと、さにあらず。むしろ「圧倒的火力を持った宇宙人に地球人は成すすべなく……」という絶望感は失うことなく、現代風にアレンジしてあるあたりは好感が持てる。原作には無いラブロマンスを人間ドラマのメインにし、さらにヒロインの叔父に「神父」を据える。これでラストの方への付箋が貼られているわけだが、今見るとなかなか心憎い演出じゃないの、これは。もちろんオチは原作どおりで最後2、3分前に唐突にやってくるが、主人公が「奇跡だ……」とつぶやきたくなるくらいに破壊絵図がピタリと納まってしまうのだ。それで万々歳にならないあたりの雰囲気は結構好きである。

 ちなみに火星人に関しては途中と最後にちょっとだけの登場で、演出もホラー風味。世界中が戦場となる場面のナレーションで、「イギリス人は勇敢に戦ったが……」とわざわざ付け足されるのは原作への敬意か?

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (5 人)ねこすけ[*] 水那岐[*] おーい粗茶[*] クワドラAS[*] ぱーこ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。