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[コメント] KUBO/クボ 二本の弦の秘密(2016/米)

あまりに退屈な展開に、公開時の評判は一体なんだったのだろうとビビる。このスタジオ、『コラライン』も『パラノーマン』もそうだったがその圧倒的な技術には目を見張るものがあるけど、話自体はやたら冗長でオープニング以上のクライマックスがないんだよなあ
アブサン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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オープニングの大波のスペクタクルや村でのクボと母親の生活を描いた序盤は本当に素晴らしいと思う。しかし、村を離れ旅に出て以降、違う作品なんじゃないかというくらい魅力が失せる。母親との辛い別れがあったにしろ、クボはちょっと許容できないレベルの聞き分けのないガキに変貌してしまい、出て来るたびにイライラするだけの存在になる。もちろん聞き分けのないことがダメなのではなく「聞き分けのない主人公」に観客が感情移入できる脚本になっていないことがダメなのだ。

以降は、魅力もなく癇にさわるキャラクターたちがどうでもいい口喧嘩やら説明台詞やら、つまらんしゃべくり芸をするだけのシーンが多すぎてうんざりする。

サルとの出会いのシーンなどは、間延びしてる割に中身のない説明台詞と重度の嫌味(なんでだ)を延々と垂れ流すより、寒がるクボの体をサルが暖めてやるとか信頼感や繋がりを描くべきだったんじゃないのか。せっかく雪が降ってて初めての仲間は毛がもふもふのサルというシチュエーションで、生気が薄かった母親との対比にもなるんだしさあ。なんだよ「あたしの鼻はお前の10倍は効く」って。なんも意味ない無駄台詞じゃねえか。

そもそも、一度注意された行動を繰り返しては怒られてまたブツクサ文句を言うガキ、説教と批判と小言ばかりで大して役に立たないサル、イラつくギャグは飛ばすくせに得意の弓では活躍しない弓使いのクワガタと、どうしてこれで面白い話になると思ったのか疑問なキャラばかりだ。彼らの正体を考えるとなおさら納得しにくいギスギスしたやり取りをしているのは、もう単純にストーリー的に問題があると思う。

アクション場面にしても、序盤にあった折紙芝居のアイデアや面白さを上回るものは出てこず、おまけにクボはほとんど戦わないので冒険ものと呼ぶにはあまりに退屈だ。敵の双子も二人一緒に登場するからこそ不気味だったのに、一人ずつ襲いに来たら双子設定の意味ないだろ。こういう所は本当に下手だよなあ。しかも残りの敵はジジイだけって、スケールがあまりにしょぼいよ。

タイトルにもなっていて重要なアイテムのはずの三味線も、ただ弾いて折紙を動かすだけでオチになるまでストーリーには特に絡まず、効果的に使えていないのでむしろ強引にすら思える。親は喜んで子供に見せたがる題材だろうけど、当の子供は寝るんじゃないのか。

ライカスタジオの作風って、物語を見せることよりも作り手の技術の押し付け・テクニック自慢が前面に出すぎているので、観客目線で話を作れる脚本家なりアドバイザーを入れた方が絶対いいと思う。この表現力でクボ一行のキャラクターがそれぞれ手に汗握る大活躍をして窮地を助け合う作品なら、めちゃくちゃ面白そうじゃない。ていうかなんでそれが出来てないんだよ。

吹替で見たのだけれど、矢島晶子田中敦子羽佐間道夫ら名優の演技力をもってしても退屈な台詞の応酬には太刀打ちできず。

「瞬きすら許されぬ」どころか、寝ぼけ眼で見るくらいで十分でした。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)DSCH 寒山拾得[*] disjunctive[*]

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