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[コメント] ザ・レイド(2011/インドネシア)

最強の狂犬を引き立たせる普通の男、アンディ
アブサン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ラストの闘いにおいてセリフでの説明はないが、アンディの一挙手一投足がマッドドッグの強さや怖ろしさ、そして強烈なカリスマを実によく引き立たてている。

それまでマッドドッグに拷問されていたアンディは、主人公ラマが助けに来て手枷を解いている最中もマッドドッグから絶対に視線を外さないし、二人を相手に闘いを引き受けてみせるマッドドッグに対して先制攻撃を仕掛けたのも彼だった。

同じ組織で生き抜いてきた身として、アンディはマッドドッグのことを知り尽くしていた。ここでマッドドッグが二人同時に相手をすることもわかっていたし、それがどれほど厳しい闘いになるかもわかっていた。一瞬でも気を抜いたら命取りになることをアンディは知っていた。

だから最終決戦では、マッドドッグが後ろを向いた瞬間にアンディは不意打ちを仕掛けた。主人公側が二人で敵が一人という構図も印象的だが、卑怯な戦法を取るのがまた主人公側というのもシビれる。マッドドッグの異様な存在感がさらに際立つ。

そして激しい闘いの末、マッドドッグが二人に辛くも勝利し、その快感に恍惚となっているところを、アンディは背後から刺し殺した。

闘いのために闘う男と、生き残るために闘う男の差がここでついた。

マッドドッグは結果的に敗れたが、そのあまりに無茶苦茶な闘いぶりと死に様は、最強の名を冠するに相応しい強烈なものだった。

この映画を観た人は誰もがマッドドッグに魅了されただろうが、その理由は単なる彼の強さや中盤の「銃は好きじゃない」のシーン(あそこ本当かっこいい!)だけではない。最後の闘いでのアンディの演技あってこそなのだ。

この凄まじい説得力と緊迫感、それをセリフなしのアクションだけで描く美しさ。この演出には心底震える。傑作!

(しかし元々続編のつもりはなかったとはいえ、『GOKUDO』でのアンディの扱いは泣けるぜ。こんなに必死で頑張ったのに)

(評価:★4)

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