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[コメント] 君の名は。(2016/日)

感情に訴えてくるSF恋愛アニメ。
saku99

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







見始めたときはナンジャコリャと思っていたが、音楽の効果もあって感動的な作品だった。 とくに自然災害による犠牲を回避できるのかという筋書きは震災を経験した日本人にとって心にささるものがある。

確かにお互いにスマホを使っているのになぜ3年のズレに気づかないのかという大きな疑問が観客に残るが、目覚めるとあまり覚えてないだとかしばらくすると忘れてしまうという設定によって納得することもできる。夢による入れ替わりはもともと宮水家に伝わる特殊能力であり、それは彗星落下による被害を回避するためのものだとすれば、日付のズレには気づかないようになっているのだろう。

まあSFファンタジーだからどうとでも解釈できるのだ。

ネット上ではいろいろな解釈がされていて面白い。雑誌のムーが本編で使われていることからもオカルトっぽい設定があるようだ。

変電所を爆破する前、テッシーのバッグにあるムーにはティアマト彗星が人工隕石だと書いてある。1200年ごとに糸守に落下する設定なのだから、むしろ知的生命体が設置したものとするほうが自然だ。 そして宮水神社の人たちは彗星落下を伝え被害を避けるための特殊能力を与えられているのだろう。知的生命体により太古の昔に遺伝子レベルで組み換えられているのかもしれない。組紐の作り方や模様はDNAのらせん構造を思わせる。古文書が火事で紛失したという設定で色々考察できるようにしているのはうまい。

瀧くんが三葉と入れ替わりを起こしたのも、中3の時に三葉からもらった組紐を時々腕につけていたからなのだろう。三葉のDNAが付着したせいで入れ替わりが起こったわけだ。

そもそも三葉が東京に出てきたとき、電車の中で人ごみに紛れて見えないはずの瀧くんを見つけたことからも、三葉が普通の人間ではないことがわかる。

雑誌や新聞の記事で糸守が古代から製鉄が盛んだったと紹介されていることも、鉄を含む隕石が文明発達を促してきたことを示している。知的生命体による実験という設定なのではないだろうか。宮水家の能力はタイムトラベルや多次元の存在を活用できるかという実験なのかもしれない。

と、妄想できるのもこの作品の良いところだろう。興行的に成功したのは演出の効果が大きい。とくにRADWINPSの音楽はクライマックスとカタルシスに非常に効果的だった。それだけに芸術的側面は軽く見られてしまっても仕方のないところだ。アカデミー賞やキネ旬に無視されてしまったのもしょうがない。 オープニングで主題歌を流すのはこの作品が深夜アニメの延長であることを思わせるしパンチラとかおっぱいとか萌え要素もふんだんに入っているわけで。あの花とかでアニメに慣れた人にはすんなり受け入れられるけれども。いわゆるジャパニメーションの傑作であることは間違いない。

ラストでお互いの存在に気付いた二人が階段ですれ違うとき、初めはうつむいて通り過ぎるのが日本人ぽくてよかった。 しかし頑張って糸守の人々を二人で救ったことを本人たちは覚えていないわけで、その記憶無しに二人がこれから一緒になっていくと考えると少し寂しさがある。 そんなふうに感傷的になって心に残る作品でした。

(評価:★5)

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