コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 崖っぷちの男(2012/米)

まず確認しておきたいのは、いよいよもってエド・ハリスリチャード・ウィドマークの生き写しになってきたということだ。それはもう面差しや雰囲気といった点に留まらず、口角・目尻の操作法や声音などの細部に至るまで。悪役としての造型に面白味は薄いが、そのウィドマーク的存在感だけで釣銭が来る。
3819695

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







リアリズムの観点から瑕疵を指摘するのが困難ではないにしても、「無実の証明」「飛び降り自殺」「金庫破り」をそれぞれ不可分な鎖状の連関として提示する着想はすこぶるキャッチーだ。直近で云えば『ペントハウス』などのケイパー・ムーヴィの作法に則りつつ、実行部隊と司令塔の分離の仕方に新奇性があり、「チーム」と「家族」を等号で結んだ「ファミリー・ビジネス」感も彩りを添えるだろう(結末はジェイミー・ベルジェネシス・ロドリゲスの婚約だ!)。野次馬の扱いは『狼たちの午後』への目配せで、ご丁寧に「アッティカ!」と叫び出すおっさんまで登場するが、クライマックスではそのおっさんのファインプレーが飛び出してサム・ワーシントンをアシストする。その大衆観は本家と比較すると楽天的に反転しているとさえ云えそうだが、終幕曲のザ・クラッシュ“Police On My Back”におけるパトカーのサイレン音を模したギター・リフまでもが祝福のように響くハッピー・エンディングの映画にあっては、むしろその楽観が似つかわしい。

ワーシントン-ベル-ロドリゲス VS.エド・ハリスの構図に重きを置き過ぎたために、「失意からのカムバック」というエリザベス・バンクス側の主題がいささかおろそかになったきらいはあるものの、バンクスとワーシントン/エドワード・バーンズ、またベルとロドリゲスの間で展開される軽妙な台詞の掛け合いには娯楽映画の滋養がたっぷりと含まれている。緊迫した状況には緊迫した台詞を書いておけばじゅうぶんだと思っている脚本家はとんだ野暮天である。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (4 人)緑雨[*] TM[*] ガリガリ博士 けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。