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[コメント] 義兄弟(2010/韓国)

映画が観念的把握に自縛した『映画は映画だ』よりもずっとよい。むろん満点の活劇ではないが、ここまで頑張って市街チェイスや集合住宅アクションを見せてくれるとは嬉しいじゃないか。風景のヴァリエーションにも気を遣っているし、人探し業のディテールで挿話に厚みをもたらすシナリオワークも心憎い。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







またソン・ガンホカン・ドンウォンの対立が解消されていく過程も的確に演出されているが、その流れを丁寧に形づくることに傾きすぎたためもあるのだろうか、欲を云えば「自分だけが相手の正体に気づいている」と思い込んでいる者同士の腹の探り合いにも更なるアクセントがほしいところだ。それぞれの尾行シーンに何かもうひとつ仕掛けを施す、とか。

クライマックスのアクション・シークェンス。もはや衆人に憚りしない白昼堂々の発砲劇はチョン・グクァンの「凄腕の殺し屋」像を損なう面もあるが、彼の人格の異常性を決定的に印象づけて、その悪役造型を完成させる。続く屋上での一幕。ここで最高度まで高められた位置エネルギーを「落下」という運動エネルギーに変換してみせるのも正しく映画的な翻訳だ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)寒山拾得[*] まー[*] 赤い戦車[*] ぽんしゅう[*]

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