「今川焼」ののぼりのカットから「アイスキャンデー」ののぼりのカットに繋がれることによるスマートかつ豪快な時間的省略にまず驚かされる。長男片山明彦の死の場面を丸ごと省略してしまうというのも普通じゃない。田中絹代と三島雅夫が思い出話をしている場面からストレート・カットでフラッシュバックに移行する潔さも図抜けているし、加東大介に対する「捕虜だったから『捕虜のおじさん』と呼ぶことにしました」という身も蓋もなさにも唖然とする。さらには岡田英次の「ピカソパン」や唐突に現れるエンドマークにも吃驚せずにはいられない。そうそう、香川京子の花嫁姿の美しさもまさに驚異的と呼ぶに値するだろう。

また（成瀬の映画はほとんどすべてそうなのだけれども）ロケーション撮影のすばらしさについても一言しておかねばなるまい。岡田と香川（＋子供ふたり）のレクリエーション（加東いわく「リクリーニング」）や遊園地。とりわけ次女チャコとの別れを目前に控えての遊園地シーンはもうただただ感動的だ。遊具に掴まってぐるぐる回る田中絹代！