[コメント] 三十九夜(1935/英)
現在においてもこの映画から学ぶべきことはまだまだたくさんある。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
めまぐるしく移り変わる舞台の、その機能ぶりがいちいち凄い。まさに映画のお手本だ。ここぞという場面以外では音楽を用いていないことも口笛の効果を際立たせている。この口笛が原作小説でどのように描写されているのかは知らないが、音の扱いひとつをとってもヒッチコックは「映画と小説は違う」という命題を鮮やかに打ち出している。
ヒッチコック映画はしばしばリアリティの欠如について指摘されるが、その指摘は、映画にとってはリアリティよりも重要なものがあるという厳然たる事実をヒッチコックが知っていたことを意味するに過ぎない。そりゃリアリティの欠片もなく、またリアリティが欠如していることに何の意味もない映画にはうんざりすることもあろうが、少なくともヒッチコックにおけるリアリティの欠如は多くの場合魅力的なものだ。中盤にロバート・ドーナットが警察に逮捕され「わわ。ここからどうやって逃げ出すのだろう。誰か助けに来るのかなあ」などと気を揉んで見守っていると、あろうことか何の説明的描写もなしにドーナットは窓を突き破って逃げ出してゆく。誰もが「んな阿呆な」と思うだろう。しかし、面白い。リアリティもなければ機知に富んでもいないこの危機の脱し方。ゆえに、面白い。
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