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[コメント] 白痴(1951/日)

実を云うと、黒澤版を見る前に、原作を読んだ。それは、純粋に、この映画を見るために読んだのだ。どれだけ物語が削除されているのかを知りたかったし、原節子森雅之三船敏郎の換骨奪胎ぶりを楽しみたかったのだ。
ゑぎ

 現存するバージョンは確かにプロットの欠落感が甚だしく、無惨なものかもしれないが、しかし、黒澤のことだから、強い画面を優先して残したのであろう、恐ろしくテンションの高い画面の連続で、決して悪い出来ではない。いや、これでも充分に面白い、 見応えのある映画である。

 という訳で、印象に残る場面を上げていくとキリがないのだが、まずは、写真館の飾り窓のポートレイトとして登場する原節子。この写真を見る三船と森のカットの異様さ。氷上カーニバルのシーンのエイゼンシュテイン『メキシコ万歳』のような造型。そして、赤間伝吉−三船の家の、雪にうずもれた廃墟のような美術装置が決定的に素晴らしい。脇役だと東山千栄子の毒舌ぶりがとても面白い。原作でも、裏の主人公のような役なので、映画でも彼女の扱いは別格になっている。であれば、ラストカットも東山千栄子に締めさせる、ということで良かったのではないだろうか。『どん底』の三井弘次のような。

#備忘

・パーティのシーンで三船達が乗りこんできた際に映るパーティ客の一人として 若き岸恵子がいる。一瞬映るだけだが、これはすぐに分かる。

・三船−赤間の家の看板は「𠃌」の中に「ア」。(機種依存文字で文字化け?)

志村喬ー大野の家の前、千秋実とのシーンで、グリーグ「山の魔王の宮殿にて」。

・氷上カーニバルのシーンは「禿げ山の一夜」

・オルゴールから「ドナウ川のさざ波」

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)緑雨[*] ぽんしゅう[*]

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