[コメント] イージー・ライダー(1969/米)
今や半世紀前の映画になってしまったが、改めて観ると、分断されたアメリカ、BLM、ヘイトクライム…現代にも厳然として存在している社会の病理が根本的に変わっていないことを痛感させられる。
冒頭のヤク売り渡しのシーンで巨大な旅客機が頭上を通り過ぎる件りだったり、後半のカフェのシーンで3人に嫌悪感を表すおっさんたちとバイクに興味津々の女子たちをカットバックするあたりなど、不協和の演出が冴えている。
シーンつなぎで前後のカットをフラッシュバックで細かく繰り返す手法はやや技巧的だけどユニーク。名曲を背後にバイクで悠然と疾走するオン・ザ・ロードのシーンは背景の雄大な風景に見惚れる。ヒッチハイカーと3人でのシーンだったと思うが、夕暮れの紅い空を向こうに完全な逆光で黒い影となった彼らの動きを捉えたカットも印象に残る。そして、ニコルソンのウイスキーの飲み方!
言うまでもなく何より衝撃なのは、最期の残酷さ。ただ残酷なのではない、その残酷さを嘆く間すら一切与えない描写の呆気なさこそが、命のあまりの軽い扱いを印象づけ、強い余韻をもたらすのである。
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