[コメント] 若おかみは小学生!(2018/日)
ウリ坊ら幽霊は浮いたり消えたり通り抜けたりするものの、確かに肉体を持った実在する少年少女として描かれている。神楽の場面の感動は、現実と重なる別のレイヤー、もうひとつの現実を我々が目撃することから生まれるものだ。しかし彼らの成仏や昇天、生まれ変わりについてはなんでなんだかピンと来ず、映画の御都合でお別れになってんじゃないのかとしか思えなかった。もっとずっと春の屋に居ったらええやん。
この映画、幽霊や妖怪はおっこに寄り添ってくれる楽しい存在として描く一方で、冒頭の交通事故の場面はメチャクチャ怖い。監督がYoutubeで事故動画を見まくって研究でもしたのか、トラウマ必至の凄まじい現実感である。そして「幽霊よりも交通事故の方が遥かに恐ろしい」のは、現代を生きる我々にとって真実以外の何物でもない。だいたい、幽霊にとり殺されたやつが何人いるというのだろう。ちょいとネットで調べたら、この映画の前年2017年の国内交通事故死者数は3694人、これは統計の残る1948年以降で最小の(最良の)数字らしい。最多は1970年の1万6765人で、90年代前半も1万人超えが続いていた。幽霊どころか戦争や震災レベルで毎年毎年人が死に、それだけ多くの家族が悲しみに暮れているのだ。アニメ界最速の自転車乗りである監督が交通事故について他人事ではない確かな実感を持っており、確信をもって事故の場面を描いたことは疑いようがない。
まあ交通事故は一例だが、これは志ある映画だと思う。世の幸せなお子さんたちに「お前の両親も死ぬのだ、みんな死ぬのだ、お前も死ぬのだ、だから死ぬまで生きるのだ」と身も蓋もない、しかし本当のことを真剣に伝えるハードコアな劇薬だ。しかしですね、オレは好きだけどこれが子供にウケるかというと、たぶんこれウケません。子供はプリキュアとかコナン君の方が好きだと思う。でも見てほしい。そんな映画でした。
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