コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] Dolls(2002/日)

北野武の映画のキャンバスに、鮮やかな赤が加わる。「キタノ・レッド」誕生の喜び。
いくけん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







停滞気味だった北野武が復調したことを素直に喜びたい。『HANAーBI』のような、観客を、黙って観入らせる感覚が。

「キタノ・ブルー」―――人生の静謐(せいひつ)さ、深遠さ、を表す象徴的な深い色。海。空。

この映画で使われた、赤色。赤い衣装。赤い紐。やはり、「キタノ・ブルー」に似て、人生の厳しさ、儚さを感じさせた。「北野映画」の基調は変わらない。(秀逸な赤の使い方。)

そして、この映画の赤色 は、さらに含みをもたせる。

現実の二人の「道行き」は、あの朽ちた黄色い自動車みたいに、ボロの衣装を纏っていただろう。二人を結ぶ赤い紐も、色あせていただろう。

そんな汚いなりの現実の二人(今の時代だと想像もし易い。)を思い浮かべながら、この映画の中の二人を見ていると、色鮮やかな、赤い衣装が目にしみる。赤い 紐が目にしみる。

そう、「死出の旅」には、綺麗なべべが相応しい。=日本の文楽、歌舞伎などの伝統文化にみられる細やかな思いやり。

「キタノ・レッド」―――桜の花の色よりも、もっと我々に直截(ちょくさい)に伝統的日本文化の 艶やかさ、細やかさ を連想させる、鮮やかな赤。極めて独創的だ。

北野武はこれから、どんな色たちを見せてくれるのだろうか。楽しみだ。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (6 人)甘崎庵[*] のこのこ 水那岐 トシ[*] Pino☆[*] Linus[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。