[コメント] ALWAYS 三丁目の夕日(2005/日)
昭和33年をリアルタイムに知る年齢ではない。実はまだ生まれてはいない。しかし、この映像にある東京の昭和の風景は、数年後の地方都市そのものだ。少々、タイムラグのある自分は、地方に住む田舎人。だから、ちょうどこの東京の風景が自分の少年時代にマッチする。
涙腺が壊れたのは、一台のテレビの前で力道山を応援する人々を見た瞬間だった。昭和を代表するベタな場面だ。なのに何でこの場面で涙があふれるんだろう。流している本人もわからなかった。ただ、無邪気にそして真剣にテレビを見て興奮する人々の映像は、自分の中の何かを壊した。そこに映る人々は、確かに前向きだった。純粋に前向きだった。目標があった。夢があった。それが伝わってきたのかもしれない。しかし、それは今まで何度となく言われてきたことだ。何か犯罪が起こるたびに、「物が豊かになった分、心を失った」と多くの評論家がしたり顔で唱えていたのを聞いてきた。わかっている。それはそうなんだろう。高度経済成長で得たものは確かにあったが、失ったものもある。お金を追いかけ、心を置いてきた。知識としてはずっと理解していたつもりだった。しかし、それをこの映画のたった一つの映像で理解した時、とてつもなく淋しく悲しくなってしまった。こんなベタな映像では泣かないぞ。何度そう思っても、あふれる涙は止まらなかった。自分自身も、そして日本全体が失ったものはとりかえしのつかないものだったんだと気づいてしまった。
その後は、何度となく涙を流し続け、エンドロールの間中、一生懸命ハンカチで目を拭いていた。多くのおじさんやおばさんが立ち上がれなかったのは、自分と同じだったのかもしれない。
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