コミックからして「あずみ」の魅力はやはり、超人的な殺人剣。

相手がスパッと斬られると刀を握った腕ごと離れていく悪趣味描写は、コミックではイヤという程登場する。この映画でそれを求めたが、美女丸が首を斬られる他数える程しかない。あんな船に大金かけないで、『１３ゴースト』『ゴーストシップ』の人間スライスを魅せたダークキャッスルのスタッフを招へいして欲しかったところだが、これはこれで致し方ないと思う。これを多用するとスプラッター映画になり果ててしまう。

あずみが茶髪というのは許してあげて下さい。彼女はどうやらハーフの様ですから。そこまで監督は考えてなかったかも知れません。自分が監督だったら原作同様に碧眼にしてましたけどね。こういったやっつけ仕事的な点は、美女丸を取り巻いている敵役が使う違和感ある現代言葉や、クルマの轍に現れてました。

物足りないのは、あずみの目にも留まらぬ超スピードの殺陣が１回のみ、もっと多用して欲しかった。『リターナー』で出てきた「ソニックムーバー（作動者の体感速度を２０倍にする機械）」の様な効果は、この映画にこそ最適なのです。

原作にもそこそこ忠実でそつなくまとめられているが、これからのターゲットに真田昌幸がコミックには入っていなかった様な？　でも、大坂の陣を考えれば真田勢が一番”枝打ち”の必要性はあったと気付かされる。

さて、この『あずみ』のコミック版は、小幡月斉と仲間達が全滅してからが蛇足としか思えない。せいぜい大坂の陣迄は、初期の構想としてあったと思われるけれど、それ以降は惰性で続いていて、コミックの愛読者に見切りを付けさせない様にする事がイヤらしい。

こういったケースは、現代のボーイ向けコミックに多く見受けられる。「ドラゴンボール」なんかは、亀仙人の「もうちょっとだけ続くんじゃよ」のセリフからの方がむしろ長かった。サイヤ人の登場からは、付け足し惰性のストーリーだが、強敵を倒すと更なる強敵が現れて、バトルの繰り返しといったパターンが、アメリカ人には受けがいい様だし、ギニュー特戦隊のエピソードなんか好きだからまぁ許そう。

その他のストーリーもので惰性、引っ張り系のコミックとしては、ちょい昔で「沈黙の艦隊」のＮＹ編、ここ最近のものでは「犬夜叉」「２０世紀少年」「３×３ＥＹＥＳ」「ミスフル」「テニスの王子様」「ワンピース」「遊戯王」「武装錬金」「ＮＡＲＵＴＯ」「黒猫」・・・ああっ、数え上げたらキリがない。どれもこれも物語の成り行きが全然気にならなくなってきたのは致命的。頼むから「あずみ」ともども早く終わってくれ！