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[コメント] あずみ(2003/日)

この監督、前作以上に酷くなってしまっているじゃないか。確かにアクションの質は上がってはいるかもしれないが・・・。所で、上戸彩って演技下手くそじゃん。カッコよくない。 2003年4月24日試写会鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







まず、前作『VERSUS』にも言えた事だが、この監督はよほど長い映画が好きらしい。しかも、言わせて貰えば、この監督の現段階の映画を二時間も見せられるのは苦痛だ。試写会の最初に「上映時間は2時間20分です」と言った時、嫌な予感はしたが見事に的中。だらだら長い。ここまで長いと、面白い物も面白く見えない。しかも、それがあまり面白くない内容なのだから、苦痛極まりない。

前作では、この監督はひたすらアクションだけの内容で1時間40分も映画を撮った。そして、確かにその実力は見えたし、面白かったがまだまだ甘さを残していた。個人的に、若手、しかもあれだけの作品を作れる人間なので次回作には期待していた。そこで登場したのが、この『あずみ』である。正直、アイドル映画に成り下がってしまうのではないのかと、少々怖かった。だが、思ったほどその路線に走っておらず、まだ許容範囲ではあった。

VERSUS』の奴らも出てきて、前作の名残のようなギャグをする。毒っ気の溢れるブラックユーモアだ。斬られて、「やられちゃったよ」と倒れる姿で館内は笑いに包まれていた。前作を知っている人は特に笑えるシーンでもないような気がするが、このギャグは滑っていなかった。

だが、クライマックスで爆破から吹き飛ばされて中に舞う飛び猿のシーンは、見事に滑っていた。全く笑えない。しかも、あれだけ個性を見せておいてあっけなく殺してしまうもったいなさに唖然とした。あれだけ個性ある脇役を揃えておきながら、何か中途半端でもあったし・・・。

原作漫画は読んでいないが、監督自身もファンらしく、確かに映画を見た限り、面白いのだろうと予想はつく。登場人物一人一人にきちんと個性を持たせている所に好感が持てた。しかも、一人殺し、一人死に、と、周りの人間が死んでいく姿などで葛藤する「刺客」と言う設定も面白い。

だが、本当にだらだら長い。アクションもスローを入れてカッコよさを演出しているのは良いが、所々不必要と思える箇所もあるし、ラストの美女丸との一騎打ちのシーンで回転するカメラは、監督本人は「斬新」と思ったのかもしれないが、別にカッコよく見えず、見辛く思える。それに、たまにアクションが分かり難いシーンがある。カットを短くしてカッコイイ映像を目指すのは結構だが、早すぎて観難ければどうしようもない。この映画の映像には、監督が自分自身の美意識に酔いしれているナルシズムが感じられた。だから、アクションが薄っぺらいのだろう。

大体、この映画、「時代劇を超えたJIDAIGEKI」と宣伝しているが、これは時代劇ではない。ましてや「ちゃんばら」でもない。ただ、ハリウッドが影響を受けているブレードアクションを日本でもやって見ただけの映画だ。これは本当に「ブレードアクション」にしか見えず、「ちゃんばら」には見えない。一般ウケするかもしれないが、それは「ブレードアクション」がカッコイイだけの事。

確かにアクションを「絵」としてみるとカッコイイ。だが、そのアクションの裏に何も無い。ただ「カッコイイ」だけのアクション。『男たちの挽歌』が何故かっこいいか、それをこの監督は理解していないのだろうか?正直、スローもたまにくどく感じ、うざったく見えるときもある。

この話は前作と違いドラマを見せるアクションだ。アクションを見せるドラマではない。つまり、そのアクションの裏に感情の爆発が無ければ、クライマックスのカタルシスは皆無に等しい。そう、この映画には感情が無い。ただ登場人物の葛藤はあるが、何もかもが中途半端。監督本人もアクションにしか興味ないと言った雰囲気が漂っている。これじゃカッコイイアクションは撮れても、「熱い物が込み上げるカッコイイアクション」は撮れないぞ、北村監督よ。

大体上戸彩の何処に魅力があるのかもわからない。正直、オダギリジョーの演技の上手さとカッコよさ、北村一輝のカッコよさには共感できるが、彼女には別にそんな魅力があるように思えない。誰に話しかける時も、一人呟く時も変わらない。確かに、周りの人は「カッコよかった」と言っていたが、それは北村龍平の上手さなのだ。正直、彼女には特に魅力があるとは思えない。

彼は、アクションを見せるだけなら別に悪いとは思わない。新しい事をしようとしているのもわからなくもない。ただ、この映画に大切な「感情」が中途半端にしか描けておらず、アクションにしか情熱を注いでいないのだ。

やはり、この映画でよかったのはオダギリジョーの切れた悪役と、北村一輝竹中直人はいつも通りで、やっぱり変化なし。お前は別に出なくて良い。お前の前に殺された殿様の方が良い味出していた。

まとめ↓

アクションは何箇所かカッコイイと思えるシーンがあった。しかし何度も書くように、そこに感情の爆発が無いから見せ掛けだけのカッコよさに終わっている。主役の女優は論外。嫌い。オダギリジョーは最高。面白すぎる。カッコイイ。脇役陣も好演していた。監督は前作からある程度進歩しているが、まだまだ甘い。今作でもまだ言えるが「プロ意識が足りない」様に思える。

前作、やりたい放題やっていただけに、この作品では抑えるかと思いきや、何箇所か北村節(?)が炸裂していてちょっと嬉しかった反面、映画の出来には多少失望。しかも、長すぎる。ラストで船で逃げている所にあずみが登場するシーンではもうだれていた。ついでに、あの200人斬りの場所で、仲間が最後に瓦礫のしたから出てくるシーンでもだれていた。しかも、追い討ちをかけるように、カッコよく無いのだ。上戸よ、お前は北村龍平のお陰でカッコよく見えて評価が高まっただけで、魅力ないと思うぞ。

この監督にはセンスがある。だけど、日本刀振り回してブレードアクションされるぐらいなら、『VERSUS』を二時間半観た方が絶対まし。もう時代劇やめれ。

っていうか、何が200人斬りだ。200人斬ってないじゃないか。しかも、本当は2、3人斬ったら血油と刃毀れで、満足に切れない状態になっちゃうよ。まぁ関係ないけど。けど、本当に200人斬りしたら『ブレインデッド』ぐらいになってくれないと。いくら主演がアイドルだからって甘くしちゃダメだよ。なんであれだけ斬ってるのに、返り血が少ないんだ。

ここまで言っちゃうとまずいかもしれないが、スローの使い方がしつこい。『青い春』の豊田監督を見習え。

そして、「ちゃんばら」見たければ『たそれが清兵衛』や『壬生義士伝』の方がカッコイイぞ。俺はブレードアクションを見に映画館まで脚を運んだわけじゃない。

北村監督、まだまだ甘いな。

あー、また長々書いちゃったよ。俺のレビューも北村監督並だな・・・

(評価:★2)

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