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[コメント] シッピング・ニュース(2001/米)

文学的な象徴を映画的なイメージに変えることに失敗している印象。あまり関心の持てない内容を映画的な技量でなんとかまとめ上げた作品。
ぱーこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







冒頭、父親に水中に投げ込まれる。主人公ケビン・スペイシーの人生に対する受動性を象徴している。溺れる水中の顔が年をとっていく。こういうところはなかなかうまい。

ガソリンスタンドで男女の諍いを目撃。あばずれが転がり込んでくる。運命が向こうから「やってくる」のだ。おそらく原作にナレーションと似たセリフがあるんだろうが、ここは説明抜きで状況を映画的に示して欲しかった。原作にあるからとりあえずこういうことになっちゃうのね、という安易な印象を受けた。ケイト・ブランシェットは名演。しかし描き方がご紹介申し上げます、って感じなので、このビッチの持つやるせなさ(どこかにそういう部分がないと人物描写として薄いでしょう)がうかがえない。

ジュディ・デンチが主人公の父親=自分の兄の骨を壺から移し替える。替わりの砂まで用意周到に準備しているから、これは計画的犯行である。ここに謎がある。実の息子から骨を盗むだろうか?後にこの兄の子どもを身ごもって12才で降ろしたことが明らかになる。そのスケートの回想シーンはきれいだが、きれいすぎて、主人公を水にたたき込む父親の少年時代とは思えない。このシーンもこういことがありました、という描写である。

以下同様な印象が続く。ラッセ・ハルストレムの手腕はたしかだから、ついつい見入ってしまう。島で知り合うことになるジュディ・デンチも好演である。だめ中年男を演ずるケビン・スペイシーはすでに定評あるはまり役だが、記者になってからの彼にはどこか安定した存在感が感じられる。映画を見ているその時その時は納得している。劇場を出てしばらくすると残っているのは、したたかな存在感のある俳優ケビン・スペイシーで、インク工から記者になり傷を抱えて人生の再出発を願う主人公ではない。

きちんとした手抜きのない静かないい映画を見たという印象と、なかなかすさまじい人間の生き様を示されたという原作の内容がぴったりマッチしていない。この作品をアメリのような撮り方をしたら、大化けしたかもしれない。そんなことを考えた。

それでも評価4は映画として減点する部分をあまり見いだせなかったから。ともかく退屈はしなかった。

(評価:★4)

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