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[コメント] スミス夫妻(1941/米)

ロンバートの端正な美貌、モンゴメリーの甘いマスク、レイモンドの眼光を前にすると何だか騙されてしまうが…。
死ぬまでシネマ

初期のサイレント映画を除くとヒッチコックの唯一のコメディ映画(非犯罪映画)との事だが、多くのひとが指摘する通り、それはこの映画の「仮面」に過ぎない。

まず最初に目立つのは「妻」(ロンバート)のヒステリー。ヒッチコックの女性観の要である「神経質」はここでも強調され、物語に様々な危機を与えている。そしてそれに対する「夫」(モンゴメリー)の過剰な寛容(安穏)と偏愛。一見夫は激情型の妻を冷静に受け止めているように見えるが(特にラストなど)、実際は互いに客観視出来ていないいわば「妄想の夫婦」とも言えるかも知れない。そこへ現実味を帯びた人物として友人(レイモンド)が投入されたかに見えたが、実際は親離れが出来おらず(それはロンバートも同様)行動力も不充分な「未熟者」だった。

この様に、言ってしまえば登場人物は皆健全な物語展開をするには精神に問題のある者ばかりであり、それがこの映画の不安を掻き立てる構造になっている。こういう仕組みを操るのがヒッチコックは本当に巧い。こうしたパラノイア的世界を展開しておきながら男女の愛(?)を軸に無事着地して観客を安心させるのもいつもの通りである。

    ◆    ◆    ◆

アンジー&ブラピの『スミス夫妻』は、名前だけを借りたのかと思っていたら、偏愛と猜疑心で夫婦が渡り合うというヤバい設定自体が受け継がれているのだと知った。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)寒山拾得[*] 3819695[*] ゑぎ[*]

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