刑務所に入っていた男がヤクザと対決するという設定からすれば、主人公・ゴダケンはヒーロー的な活躍をするのが物語の定石である。

しかし、ヒーローならばヤクザと刺し違えるとか、劇的な死に方をするはずで、決して「川に落ちた子を助けて自分が溺れた」などという、あまり格好いいとは言えない死に方をするはずがない。 つまり彼はヒーローではなく、ただのじいさんだったのだ。その姿は「ちょっと勇気を出せば、普通の人間でもこのくらいのこたぁ出来るんだぜ」ということを（珠子だけにでなく）我々にも教えてくれる。

しかし、ちょっと穿った見方をしてみると、かつて日活のニューフェイス募集に応募して落選した筒井康隆は、小林旭や赤木圭一郎のような日活的“ヒーロー”を否定するつもりでこの話を作ったのかな？（笑）