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[コメント] EUREKA(2000/日)

「発見」は人物の数だけ存在する。登場人物にも、観客の我々にも。[新文芸坐]
Yasu

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







少年は殺すことで生きようとし、少女は自らが“死ぬ”ことで生きようとした。

バスジャック事件で負った心の傷は、そしてそれを乗り越えようとする方法は、実に三者三様である。沢井は兄妹と暮らし、彼らのために生きることで克服しようとした。一方それとは対照的に、少年は人を殺すという行為で、自分の存在を確認しようとしたのかも知れない。

その少年が警察に出頭し、残された少女は一人海岸で撃たれたように崩れる。それは、兄が殺した人への贖罪のようにも、またバスジャック事件から今までの自分をリセットしようとする行為のようにも見える。そして、ようやく彼女なりの道を「発見」した少女は、発話をもって事件と向き合うことができるようになるのだ。

兄妹の従兄・秋彦青年の存在もいい。「あちら側」にいる主人公3人を「こちら側」に引き戻そうとし、却って主人公たちが「あちら側」へもたれかかるのを強める「反作用」の役割を劇中で上手く果たしている。

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小ネタ:本作で使われた、モノクロながら若干色がついたセピア風の映像「クロマチックB&W」とは、モノクロで撮影したネガをカラーポジに焼きつけるというもので、何でも現像時の環境に依存するらしく、同じネガから起こしたものでも1本として同じ色調のプリントが存在しないらしい。

(評価:★4)

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