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[コメント] 猿の惑星 創世記(ジェネシス)(2011/米)

シーザーとウィルたち家族のドラマとなる前半がじっくり描かれていてよかった。それを説得力あるものにしたシーザーの演技が素晴らしい。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







しかし中盤以降ドラマはつまらなくなる。

もし人類と同等の存在が生まれた時、はじめて「進化をを賭けた闘い」なんてものが避けられなくなる予感に戦慄する。無邪気に賢いチンパンジーを自慢していた矢先に、彼女に「これからどうするわけ?」と問われ、結局子孫を残させず死んでもらうしかないのだという結論にたどり着き、そんな通常考えもしない倫理観をついてきたり、保護施設の気の弱い飼育係がシーザーに促され自ら檻に入る屈辱感を味わったりすると、架空の世界下での現実感を味わえてこれぞSFとうれしくなる。

しかしシーザーが知性とともに道徳も獲得してしまうという設定となってからは、もうSFドラマにおける最大の緊張状態が終わってしまう。「猿」対「人間」の争いは森への脱出時の肉弾戦(見所といえばこれなのだが)でのみ終結し、知性間戦争は猿の側の全面譲歩によりあっけなくスルーしてしまった。「進化を賭けた闘い」という、本作、いや本シリーズの最大の問題をシーザーの人徳に負わせて終わらせてしまった。がっかりというのではなくやっぱりなあという感じだった。

人類を滅亡においこむのは猿ではなく、自ら作り出したウィルスであり、サンフランシスコからニューヨークへ伝播するやいなや、地球上に瞬時に飛び火していくグラフィックは、まさにカリフォルニア発ウォール街経由の金融崩壊を見るようだったが、このシリーズそういう社会批判的な趣味は健在なのだろうか? であれば、相変わらず人類=白人社会であって、グローバル下における競争の中で、「俺たち人類」は、台頭する他国(猿の国)の勢力に負けたのではなく、自ら作った仕組みで滅んだのさ、といってプライドを保っているようにも思える。

蛇足ながら、ここまで気の毒な設定をされた隣人をいままで見たことがない(笑)。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)水那岐[*] けにろん[*] ガリガリ博士[*] セント[*] ぽんしゅう[*]

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