同じ時間軸を、視点をずらして複眼的に描く作品は他にもあるが、ここまでピタピタッと断片の組合わさる快感を味わわせてくれる作品はまれ。「なんだよ。こんなこと想像つく訳ないだろ」でなしに、「なるほど。こういうことだったのか」と、合点の行く心地よさである。演出家の掌の上で転がされていることは一緒だが、分からないように作ってしまったら伝わらない訳で、ここらへんが映画演出上のキモなんでしょうな。カメラの視線に固定される映画という表現の特性を生かしているとも言える。内田けんじはある意味、鉱脈を探り当てたのだろうが、幸か不幸か追随者がいない（寂）。半端ない緻密さと根気が必要だからでしょう。今後とも期待いたします。

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　まあ、ちょっと違うけど、そんな感じだ。もちろん「これは葉っぱじゃなくてカエルだよ」「カエルじゃなく、アヒルだよ」と観る者に指示する、誘導するのが演出者の役割であり、力量ということだ。絵描き歌より難しそう。いずれにしても本作の楽しさは、ネタバレしないと語れない。

14/09/13記