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[コメント] クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦(2002/日)

「子供相手に人の道・人生などを説く男」
sawa:38

私達大人は思い出すべきである。子供の頃はしょっちゅう泣いていた。怒られたから・・痛いから・・苛められたから・・腹が空いたから・・玩具を買って欲しかったから・・・

いつも泣いていた。いろんな涙があった。だけど、感動して涙を流したなんていう「最高に恥ずかしい」思い出はどうだったっけ?・・・思い出せない。ソレは小学生の高学年ぐらいではなかろうか?少なくとも現在の私の周囲にいる息子の友達(春日部在住だ)にはそんな話を聞いたことがない。

幼稚園児が「感動の涙」というものの存在を知っているのか疑問である。この監督もそんな事は承知だろう。そして承知の上で2作連続でこういう作品をぶつけてきた。それも幼稚園児と小学生向けにである。確信犯の彼はいったい子供たちに対して何をしようとしたのだろうか?

オープニングの曲の歌詞は秀逸だ。「ダメ」という言葉のオンパレード。そう、彼等子供たちは一日中母親に「ダメ!ダメ!」という言葉で責め立てられている。彼等子供にとって母親は絶対的な専制君主であり、最終的には彼等は従順な家来ともいうべき立場に収まるのだ(泣きながら・・)。

そんな子供たちの唯一の武器が「涙」である。しかし彼等にとって「涙」が自分達の知らない状況でも勝手に溢れてくるなんて知る由もない。彼等には知らない事が多すぎるのだ。

この監督はそんな彼等に未知の体験をさせようとしているのか?

前作『オトナ帝国』でもしんのすけに大粒の涙を流させた。そして本作でも「人の死」という状況で「悲しみの涙」というモノを子供たちに教えようとした。

子供たちはこの2作に戸惑っている。これは明らかだ。熱狂しているのは映画マニアの大人だけという異常な事態が起こっている。

一般的には子供に見せたくないTVシリーズのしんのすけだが、この2作は親として子供に教えたくてもどうやって教えたら良いのか分からないような「涙」を大上段に構えて訴えてきている。

私の息子は今日無事に2年生になった。近所の悪ガキたちと「防衛隊」を結成し元気に遊んでいる。埼玉の春日部と越谷の市境に住む彼等にとってしんのすけはとても身近で、やっている事も本当に同じような悪さばかりやっている。だけども哀しいかな、彼等は未だ「そういう涙」の使い方を知らない。

私はもう一度、2年生になった彼等にこの映画を見せてあげようと思い再見した。明日の夜にでも家庭内鑑賞会を実施しようと思う。泣かなくてもいい。ただ、何かを感じとってくれたならば本望です。もうちょっとだけ大きくなった時に、ふいにこの映画の「涙」の訳を思い出してくれればそれで良いと思います。

PS.コメントの「子供相手に人の道・人生などを説く男」は吉田拓郎/かまやつひろしの『我が良き友よ』の一節を拝領しました。本作の監督原恵一に感謝の気持ちと苦笑いを込めて贈りたい言葉として最も適切だと思いました。

(評価:★5)

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