[コメント] サンライズ(1927/米)
都会女の闇夜の誘惑。ためらいの湖上の洗脳殺人。風景がうねる田園列車の車窓。大都会の圧倒的物量と喧騒。都市的画一化の象徴である床屋。互いの「個」をとり戻す教会と写真館。集団の中の「ふたり」を確立する遊園地の束の間の享楽の解放。暴風雨と村人総出の捜索。
若く純朴な田舎者夫婦(ジョージ・オブライエン/ ジャネット・ゲイナー)を襲った「個」の危機が「ふたり」の確認を経て「共同体」へと回帰するさまが描かれる。注ぎ込まれる映像テクニックと圧倒的な画面密度が、すべて二人の「心情」に収斂している点にこの映画の凄さを感じた。
『イントレランス』(1986)を観た感想として私は、D.W.グリフィスは「時間と空間」を駆けめぐる舞台装置スペクタルで“たったの3時間”に、人間が持つ業のほぼすべてを凝縮してみせた、と書いた。それから11年後、F.W.ムルナウは本作で「時間と空間」に「心情」を加えた映像演出スペクタクルで“たったの90分”に喜怒哀楽という人間の心の機微のほぼ全容を凝縮してみせている。
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