[コメント] 眠狂四郎多情剣(1966/日)
恐るべし井上昭。殆ど全てのカットが実によく考えられている。気合入りまくりの構図、格子や戸や木立などでマスキングされた画面。歩く人物の横移動トラベリングも目を引くし、また手持ちのセンスもいい。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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冒頭、市川雷蔵−狂四郎が地廻りの木村玄らにそそのかされて生娘を買うことになるが、この娘が登場するカットで唐突に手持ちカメラのブレ映像が使われる。これなんかは娘の持つ不安感・嫌悪感を見事に表現した演出だ。あと、五味龍太郎らに襲われる夜のシーン−手前にまばらな竹が映り、奥に武家屋敷か寺社の塀がある、シネスコの画角を最大限に活かした横の構図の画面も特筆に価する。そして演出で最も瞠目したのは雷蔵が酌婦・水谷良重の着物を脱がして抱こうとするシーンだ。水谷が雨戸を閉め部屋を暗くする照明の変化の演出もグッと来るが、雷蔵と赤い襦袢姿の水谷が右の画面外へ出て画面には畳と脱いだ着物だけが映る。この空ショットだけでもかなり穏やかでない(胸騒ぎさせる)ものだと思うが、さらに、不意に雷蔵が座りながら後ずさったかたちで胸から下が画面に入るのだ。雷蔵の顔が映らない!なんて艶かしい演出だろう。当時の大映でよくこんなことができたものだと思う。
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