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[コメント] ゴジラの逆襲(1955/日)

本作で「2匹目のゴジラ」は確かに出現した。しかしそれは、本当に降って湧いたような個体だったのか?そこで→
荒馬大介

**ネタバレ注意**
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 「原水爆実験が繰り返される限り、第2第3のゴジラが……」の通り、本作では2匹目のゴジラが出現した。が、果たしてこれは“2匹目”と呼ぶべきなのか?自分の解釈では少々違う。後から降って湧いたように2匹目が出現したのではなく、1匹目が出現した時点で既に2匹目も誕生していた、つまり運悪く、突然変異を起こした古代爬虫類が2体いた、と考えられる。

 山根恭平博士曰く「ポケット」と呼ばれる海底には、海中生物から陸上生物に進化する過程だった爬虫類が現在まで生息していたわけだが、これが数匹ではなく多数、かつ別の種類(現代までの長い歴史の間に進化を遂げた物もいるかもしれない)いたとしたら、どうか。そして原水爆の洗礼を浴びた時、突然変異を起こして「ゴジラ」と称される生物が2匹誕生していたとしたら? ならば一作目の時点で2匹登場すべきではないか、と思うかもしれない。それは、1匹しか出現していないように見えただけである。つまり、東京に上陸した個体(仮にAとする)と、海で船舶を襲っていた個体(仮にBとする)は別物だったのだ!

 両者は縄張り意識が強かった為、BはAが縄張りとした日本近海、及び東京には近づこうとしなかった。そしてAは日本近海にいたが為にオキジジェン・デストロイヤーの標的となり、倒されたのだ。そのことを知ってか知らずか、縄張りを相当意識しているBはその後やたらと東京を避けて通っている。現に、Bが本作で上陸したのは、東京ではなく大阪ではないか!『キングコング対ゴジラ』でも日本に向け南下しているゴジラは一見東京に向かっているようだが、劇中の台詞から那須にいたゴジラはどういうわけか群馬県高崎市に移動している。これでは南下ではなく西に動いており、まるで東京を避けているかのようだ。『モスラ対ゴジラ』では名古屋を、『三大怪獣地球最大の決戦』では横浜……と、見事なまでに東京を襲っていない。ようやくBのゴジラが東京を襲ったのは『怪獣総進撃』だったが、これとてキラアク星人に操られていたからである。

 さらに、レッチ島、ゾルゲル島と南の島に出現するのも特徴だが、これは南海地域がもともとBの縄張りだったことから来ているのだろう。もっとも後のシリーズでは、東京に対する意識も若干変わってきたのか京浜工業地帯まで近づくことが多くなってきたようだが、東京と呼べるところに上陸したことは無い。2匹目の個体Bの最後の出番となった『メカゴジラの逆襲』での舞台は横須賀であり、おまけに前作と同じ様に、南の海へと去っていく。まるで自らの縄張りへ戻っていくように。

 いずれにせよ、本作で唐突に現われたような2匹目の存在だが、決してそうではないという解釈は出来る。無論『ゴジラ×メカゴジラ』に登場した“2匹目”も同じである。Aが骨になっていると知ったBは、Aの縄張りを獲得する為に上陸を試みるが、人類の抵抗が結構激しかったので一旦下がった。ところが数年後、Aがメカゴジラとなって復活。初めて対決した時、Bは咆哮。その時、機龍として蘇ったAの潜在意識までもが蘇り、Aとしての意識を持った機龍は暴走する。これをBは何をするまでも無く、またも去るのだ。目の前で大暴れする機龍を観て、Bはどう思ったか?

「俺の声に反応した“あいつ”は誰だ?ひょっとして“A”か?“A”が生きているというのか?ならば……」

 やがてBは再度上陸する。Bはこう考えたに違いない。もし銀色の“あいつ”がAだとするならば、自分がここ(東京)へ上陸した時に現われるはずだ、と。そして機龍はやってくる。「やはり貴様はAだったか!」そして両者は一大決戦に……。

 ……と、いつの間にやら『ゴジラ×メカゴジラ』の話になってしまっていた。兎角、2匹目の解釈というのは、かくも複雑なものになってしまうのである。

(評価:★3)

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