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[コメント] ゴッドファーザー(1972/米)

「馬の首」という話がある。あまりに恐ろしい話なので、聞いた人間は死んでしまう。だから誰もその話を知る者はいない…(元ネタ、分からない人は済みません。レビューとは無関係です)
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 コルリオーネ一家の闘争を描いた壮大なピカレスク・ムービー。そうそうたるキャストに、コッポラの美術的センスが重なり、とんでもない作品に仕上がっている。

 主人公はドン・コルリオーネの尊称を受けるビトー(ブランド)だが、彼の息子達ソニー(カーン)、フレッド(カザール)、そしてその末の息子マイケル(パチーノ)の見所もしっかりあり、本当に良く仕上げたとほとほと感心する。ブランドは既に貫禄充分ながら、同時にパチーノの描き方が実に上手い。神経質で、マフィアのあり方に否定的な学生マイケルが兄の死によって後継者に指定された戸惑い、そしてその運命を受け入れていく課程の表情の変化が絶妙。特にラストの、マフィアのドンらしくふてぶてしい顔つきになった表情は前半で見せた顔とはまるで違っているのが凄い。

 良くここまで描けたものだ。当時のコッポラは本当に輝いていた名監督だった(私より若いじゃないか!)。

 この映画、ブランドであれ、パチーノであれ、何気ない仕草がとにかく画面にはまっている。

 考えてみれば、マフィアのドンに気に入られるためには、部下達はちょっとした仕草にすぐ対応できるよう目を彼から離してはいけない。何かちょっとした仕草で反応し、ドンが何も言わなくてもすぐにその意を汲む必要がある。当然ドンとしても、その効果を充分に顧慮に入れて顔の表情やら、仕草やらをしているわけだ。自然と部下の前での動きは技巧的になっていく。文字通り、「小指一本」「仕草一つ」で人を殺すことも出来る人間。それは生活そのものを演技としなければ生き残ることが出来ないドンという存在なのだろう。命の危険と常に隣り合わせの彼らは、生活そのものを舞台として、役を演じ続けなければ生きていけない。そんなところが画面からも感じられる。素晴らしい作りだ。

 そしてあの音楽。これも実に素晴らしい。『スティング』同様知らず知らず口ずさんだりしてるもんな。それだけ印象深く、はまった音楽と言うことだ。

 この作品によってマーロン=ブランドはアカデミー主演男優賞を見事射止めたが、何と受賞を拒否しまう(これで一人の女性の人生を誤らせたと言う)。様々な逸話を残した作品でもある。

 ところで劇中の馬の首の話は、フランク=シナトラが実際にやったことを元ネタとしていたとか。う〜む、凄い人だったんだな。シナトラって…

(評価:★5)

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