[コメント] イングリッシュ・ペイシェント(1996/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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<<水と人との関わりについて>>
本作では、砂漠映画であるにもかかわらず、(意図的であろうが)水で喉を潤すシーンは少なかった。対照的に水で肌を潤すシーンは、それぞれ印象的だった。
まず、序盤のハナ(ジュリエット・ビノシュ)が教会内で首周りを水で拭うシーン。ここでは、桶一杯の少量の水が彼女の肌にじわじわ染み込み、彼女の生気がみるみる蘇る感じを受けた。
中盤、キップ(ナヴィーン・アンドリュース)が髪を洗うシーン。ターバンを外した彼の髪のみずみずしさは印象的だ。
終盤、雨が降って、全身大火傷の主人公アルマシー(レイフ・ファインズ)をみんなで担ぎ出し雨にさらすシーン。彼の表情はよく見えないが、体じゅうから喜びのオーラを発しているかのようであった。
私がこの点に注目したのは、鑑賞中に肌が反応した(鳥肌は抜き)初めての映画だったからで、その実、自分の肌も渇きを感じた。俳優の演技も然ることながら、この映像表現には感動した。
<<主人公について>>
主人公は、時世に左右されず、ただ、砂を愛し、水に喜びを感じ、恋をする好人物として描かれていたと思う。主人公を通して、「劇的に死ぬ恋人と友人」、「幸福を見つけるハナとキップ」は、対称的に描かれていた。また、主人公は自分の語りにより、カラバッジョの親指と心の痛みを和らげるが、その後、死を選ぶあたり、彼はカラバッジョの苦痛を最初からわかっていたのではないかと思わせる。
<<作者のメッセージ>>
作者のメッセージを最も強く感じたのは、やっぱりあの壁画「泳ぐ人」。
序盤(模写シーン)と終盤(回想シーン)の2ヶ所で登場するが、その絵は何とも滑らかで楽しげに描かれており、かつては飢えも争い事も無いユートピアであったかのように感じさせる。これに対し、実際の現代として描かれていたのは、戦争と苦悩。
作者はこの2点を対比させることで、人の心の渇きも訴えていたと感じた。
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