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[コメント] 音楽(2019/日)

けいおん!』にできてないことがことごとくできている。音楽の原始的快感を描いて素晴らしいのだが、文句もある。
ペンクロフ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ケンジという男がよく判らないのだ。劇中では意図的によく判らん男として描かれており、たとえば長い沈黙のあと何を言い出すのか、というギャグには緊張感と脱力が生まれる。だから作り手の意図通りといえばそれまでなんだけど、劇中でこのケンジはいわゆる「不良」のレッテルを貼られている。冒頭から他校のチンピラは勝手に怖がって逃げ出すし、彼らの口からケンジの悪事らしきものが語られる場面もある。しかし、ケンジの悪たれ暴れん坊たる場面を我々は遂に一度も見ることがないのである。彼は本当に不良なのか。ここだ。ここにあからさまな八百長が存在するので、我々は映画を観終えても彼のことが全然判らないのだ。ラストシーンのケンジは確かにカワイイが、オレは彼奴に心を許していないのだ。アヤちゃんには心を許してる。カワイイから。この物語の本当の主人公はブラックボックスであるケンジではなく、古美術のモリタだよな。彼にはいちいち心を動かされた。彼の中には文学がある。

また、竹中直人が出てきて小物がカッコつけて大物ぶる芝居で笑わせようとするんだけど、笑えない。竹中直人の演じた彼がただ「面白いやつ」なら面白いだろうが、竹中直人が竹中直人らしさをむき出しにした瞬間、キャラクターは「竹中直人がいつもやる面白いやつ」になってしまい、これでは台無しである。歩く劇薬のような竹中直人をノープランで無造作に配役したために作品が壊れるのは、日本映画が抱える長年の宿痾だ。いい映画なのに、本当にもったいないと思う。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)ゑぎ[*] ぽんしゅう[*] ペペロンチーノ[*] けにろん[*]

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