[コメント] 殺したのは誰だ(1957/日)
金を持っている奴のところに金は集まる。そんな経済復興期の道理に乗り遅れた者たちが金に追われて金を追う。冒頭の一見華やかだが空回りぎみの商談から男は一直線に世の果てのような荒んだ飲み屋へと下降する。一気呵成の容赦無用ぶりに中平康の凄みが炸裂する。
世間の呪詛が吹き溜まったような山根寿子のそんな飲み屋から破綻と背中合わせの欲望が蛆のように湧きおこる。この世の果てから、無謀な一攫千金に走る者たちの諦観はアンリ・ジョルジュ・クルーゾー版の『恐怖の報酬』を思い出す。
日比谷の帝国ホテルあたりだろか。金持ちの外車にまとわり付いて車磨きで駄賃を乞う若者たちが描かれる。かつて、後進国の子供たちが観光客に群がり小金を稼ぐ姿を目にして、その国の貧しさを知ったものだった。終戦から10年以上を経た1957年の日本にも、まだこんな光景が存在したのかと驚いた。
クライマックスのひとつとして小林旭のビリヤード対決が二回描かれる。本作より後の公開とはいえ『ハスラー』(1961)を先に観てしまった者としては、このシーンの冗長さはいかんともしがたく残念。それとも本作公開時はこれで十分スリリングだったのだろうか。
余談です。車の先頭を歩道に乗り上げ、車線に対して斜めに駐車する様子が頻繁に出てくる。昔、六本木通りでこの止め方をしいるベンツを見たことがある。乱暴な人だなと見ていたら向かいのスーパーから出てきて平然と車に乗り込んだのは黒柳徹子さんだった。この時代に運転免許を取った人にとって縦列駐車は必須ではなかったのかもしれない。
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