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[コメント] レディ・プレイヤー1(2018/米)

ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』が俳優部の恐るべき充実によってスピルバーグ・ワークスの首位集団に身を置いた一方、これは際立った被写体の貧弱ぶりでブービーを争う。ベン・メンデルソーンマーク・ライランスサイモン・ペッグは、私が見た限りの出演作で最も退屈な芝居に終始している。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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呆れた噺だ。たとえばパク・クァンヒョン操作された都市』のほうがまだ真面目に付き合う気になれる。そもそも「人々が電子遊戯に打ち興じるのは、もっぱら現実の不遇や無聊を慰めるためである」とする世界観は、電子遊戯の価値をあまりにも低く見積もりすぎではないかしら(「定休日」の導入はこの指摘に対する予防線として以上に補強材として働く)。電子遊戯が端的に面白いがゆえに、現実の生活に概ね満足してなおこれを娯しむという人々の実在が仮定されていない。「ダービースタリオン99」以来あらゆる電子遊戯から足を洗った私はこの世界にとって門外漢に過ぎないが、たとえばこれが「映画」だったらどうだろうか。見ず知らずの他人に「お前が映画ばかり見ているのは実生活で不満足を抱えているからだ。いわゆるひとつの代償行動である」などと宣われたら、その甚だしい見当違いを糾弾する以前に私は黙ってそいつの鼻をもぐべきだろう。

作品の出来云々とは別のところでもうひとつ受け容れがたい点を挙げるとするならば、それはライランスの造型だ。鶏卵探索か何か知らないが、自らが拵えた遊戯の重大な手掛かりを自らの実人生の重大事になぞらえて設定するというのは、いくらなんでも恥じらいを欠きすぎではないか。私にとってこのような精神性の人物と関わり合いを持つことは恐怖でしかない。関連して云えば、アバターなる見目も「なりたい自分に、なる」欲望をいっさい濾すことなくだだ漏れに漏らしてなお恥じるところのないあたりが戦慄を誘い、またパーシヴァルやらアルテミスやらを自称して恬然としていられるというのも大概である(自称するところの名にたとえ無意味の数字列を採用したところで、この含羞から無縁ではいられないはずだのに)。概してこの作中人物たちは、私とはあまりにも懸け離れた精神を有している。云うまでもなく、優れた作であれば、それはいかなる瑕疵ともならないどころか、むしろ映画を興がるための一助となる。

アダム・ストックハウゼンにしても、スタックなる貧民窟の造型を除いて誇るべきところを見出しがたい仕事ぶりだ。遊戯の敗北がもたらす「身体の銭化」表現すら、その軽薄の度合いにおいてエドガー・ライトスコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』より劣るだろう。

(評価:★3)

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