[コメント] 流れる(1956/日)
大大傑作。もう壮絶に面白い。相変わらず撮影も美術も最高度にすばらしいのだが、それすらも意識化されないほどに女優たちの演技が凄すぎる。
低い腰で縦横無尽に駆け回る田中絹代はプロフェッショナリズムの塊のような女中でありながら謎の女という無茶な役どころを完璧にこなし、山田五十鈴は実質的な主役を貫禄十分に演じきる。これこそが映画の至福だと云い切りたい杉村春子の自由奔放なコメディエンヌぶり(コロッケ&ジャジャンガジャン!)には笑いすぎて落涙。やや出番は少なめながら高峰秀子と岡田茉莉子も持ち前の陰性・陽性の魅力を見事に発揮している。そして極めつけは栗島すみ子の理不尽なまでの存在感! いやいや、中北千枝子だって忘れちゃいけない。中北の堅実な薄幸ぶりが主張の強いその他の演技者たちを裏から支えている。
それに比べて男たちは不甲斐ない(というのはもちろん、この映画に対する逆説的な賛辞です)。宮口精二はいくら凄んでも栗島・山田にテキトーにあしらわれるし、加東大介は中北を泣かすのがせいぜいで、陰で杉村に「見ておいでごらんなさいよ。色男でございって顔」などと云われる始末。仲谷昇に至っては何だかよく分からない。医師中村伸郎は物語の本筋に関係ないワンシーンのみの出演だが、そのために却って彼だけがいつもの飄々とした演技で映画に爪痕を残せているか。
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