[コメント] 福福荘の福ちゃん(2014/日=英=台湾=伊=独)
こんなに気負いのない素直な優しさに満ちた映画もめずらしい。このトーンのすべては福ちゃんのキャラクター、すなわち大島美幸が背負っている。彼女がおっさんを演じることで事象の生々しさが払拭され、リアルと非リアルの境界線上に絶妙な隙間が生まれている。
この隙間こそが、現実世界に生じる「苦痛」や「挫折」のリアルを保ちながら、屈託ない笑劇ファンタジー空間を作り出しているマジックの正体だ。だから荒川良々特有の飄々とした味が臭みになることも、水川あさみのいささか類型的なキャラクターがステレオタイプに陥ることなく、福ちゃん(大島美幸)が醸し出す世界と同化して、素直な「優しさ」となって画面からあふれてくるのだ。
大蛇男(芹澤興人)の屈折も、遍路少年(飯田あさと)の苦悩もまたしかり。そこに藤田容介監督の、人の業を否定するのではなく、容認する度量を感じる。力みのないピュアな優しさが爽快な大傑作。
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