[コメント] イントゥ・ザ・ストーム(2014/米)
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冒頭ではいちびり倒した餓鬼連が竜巻に惨殺されるというホラー映画のパターンが借用され、中盤においてはハンターズ内で好感度一位だった気弱系カメラマンも火炎竜巻の餌食とされてしまう。このようにして、全篇にわたって「次は誰が犠牲になるのか」という興味が物語を牽引する。
また、すでに百万遍も指摘されている通り、ディザスタ映画はモンスター映画と親近性を持っている(配給会社が拵えた惹句も竜巻を「怪物」と称するだろう)。とりわけ竜巻は他の大規模自然災害よりも「局地性」「神出鬼没性(出現と消滅の予測不能性)」「個体の視認可能性」(たとえば、「地震」そのものは目にすることができない。「台風」も肉眼で一望に収めることは不可能である)などの点において、ひときわモンスター(強大な破壊力を誇る単数もしくは少数のクリーチャ)的である。もはや『イントゥ・ザ・ストーム』とモンスター系ホラー映画を弁別することは困難だ。陰惨のムードよりも、どこか竹を割ったようにスポーティな快活さでシーンが躍動しているのもアメリカ製の当該ジャンル映画らしい。
しかし、どれほど強かろうと速かろうと、所詮風は吹くことしかできない。要するに映画演出にとっては「何に向かってその風を吹かすのか」という問いこそが最も重大である。樹木をへし折る? よろしい。建造物をなぎ倒す? なるほど。ジャンボジェットを巻き上げる? 承知した。というわけで、もちろんこの映画も智恵を絞って良手を繰り出してはいるけれども、とは云え竜巻専門映画なのだから、ここはもう二つ三つほど「そんなものを風に吹かせるなんて!」という驚愕のブローインインザウインド的アイデアがほしい(いまだ『キートンの蒸気船』が暴風映画の頂点に君臨するのは先駆者のアドヴァンティッジのためではない)。その点も鑑みれば、高校生弟&教頭親父、ハンターズ、面白動画撮影隊が集合した街路のシーン(自動車が降ってくるなど暴風に乗った諸々が襲いかからんとする)をマイベストハラハラドキドキシーンに定めたい。
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